- 世界規模の大流行になる可能性はまだある
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世界のあちらこちらで鳥インフルエンザが流行したのが2005年のことでした。以後、調査や研究が進んでいますが、世界的に流行する可能性があるとする説もあり、用心に越したことはないようです。
鳥インフルエンザとは
鳥インフルエンザとは、鳥類がA型のインフルエンザウイルスに感染して起こる病気です。A型インフルエンザウイルスに感染して発病する鳥類は家禽(家で飼う鳥、鶏、アヒル、うずら、七面鳥など)が主で、鳥類に感染するA型インフルエンザウイルスを総称して鳥インフルエンザといいます。
■鳥インフルエンザに感染するとどうなる?
鶏など家禽が鳥インフルエンザに感染すると、
- 神経症状(首曲がり、元気消失等)
- 呼吸器症状
- 消化器症状(下痢、食欲減退等)
などが現れ、大量死につながることもまれではありません。
ヒトへの感染
本来、鳥インフルエンザウイルスは、ヒトへは感染しないと考えられてきました。というのも、ヒトインフルエンザウイルスがヒトの細胞のなかに侵入するために用いる受容体と、鳥インフルエンザウイルスが鳥に感染する際に用いる受容体とは異なっていて、ヒトは鳥インフルエンザウイルスの受容体を持っていないから感染しないと考えられていたのです。
しかし、実際には今までに多くの感染事例が報告されています。
■鳥からヒトへ感染するのはどのようなとき?
ほとんどの鳥インフルエンザウイルスはヒトには感染しませんが、例外的に一部のウイルスがヒトに直接感染する事例が報告されるようになりました。その初めは1997年、香港においてH5N1鳥インフルエンザに18名が感染、6名が死亡したことです。
鳥からヒトへ感染するときの感染源は、A型の中でもH5N1に感染した病鳥や死鳥の排泄物や体液です。この病気にかかった鳥と接触して、羽や粉末状になった糞を吸い込んだり、鳥の糞や内臓に触れた手を介して鼻からウイルスが入るなど、体内に大量のウイルスが入ってしまったとき、まれに感染することがあります。あるいは加熱調理が不十分なこれらの感染した鳥類の肉を食べるなどしての感染が報告されています。日常生活のなかでもある程度の注意は必要です。
■ヒトからヒトへの感染はある?
今までにヒトからヒトへの感染の報告は何件か報告されています。感染したヒトと濃厚かつある程度の期間持続する接触があれば、感染は起こり得ると考えられます。
■ヒトが感染したらどうなる?
原因となったウイルス株により違いが見られますが、一般的には、突然の高熱、咳、全身の倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザと同様の症状から、結膜炎、なかには重篤な肺炎、急性呼吸窮迫症状、多臓器不全などにより、急激に悪化して死に至るものまでさまざまです。
感染者の死亡率は、1997年の流行では30%でしたが、2004年の流行では60〜70%と、毒性が強力に変異しています(これらの死亡率は血清学的調査が行われていないため、本来の意味としての死亡率とは異なるという指摘もあります)。2003年11月以降の累計死亡率は52.2%となっています。
■ヒトの鳥インフルエンザ感染の治療
ヒトのインフルエンザワクチンは、Aソ連(H1N1)、A香港(H3N2)、B型に対して効果があり、H5やH7などの鳥インフルエンザに対してはA型の抗インフルエンザウイルス薬が効果があるといわれています。しかし、鳥インフルエンザの治療に使用した経験が限られており、その効果の程度はまだよくわかっていません。現在、ヒトに有効なワクチンの研究、開発が世界中で行われています。
■ヒトの鳥インフルエンザ感染の予防法
鳥インフルエンザに感染した家禽との濃厚な接触を避ければ感染の危険性はほとんどありません。
鳥インフルエンザの流行が鳥の間で起こっている国や地域に行く必要があるときには、生きた鳥を扱っている市場に立ち入らない、あるいは集団発生が見られている鶏舎などへの出入りはしないようにしましょう。やむを得ずそういったところに出入りしなければならないときは、感染予防対策として手袋・医療用マスク・ガウン・ゴーグルなどを着用し、手や指の消毒をきちんと行ってください。
■鳥インフルエンザの発生地域に滞在した場合
鳥インフルエンザの潜伏期間は10日といわれています。その期間内は、念のため、以下のような対応をしてください。
- 入国後10日間は朝夕の体温測定を実施し、健康状態を確認する。
- 帰宅後外出する際は、万一に備え、拡散防止のため、マスクを着用する。
- 発熱や激しい咳、呼吸困難などの呼吸器症状が現れたら、鳥インフルエンザ発生地域からの帰国であることを保健所に告げてから、受診先等を相談し、医師の診察を受ける。
■日本政府の鳥インフルエンザ対策
鳥インフルエンザは家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病の一つに指定しました。感染が確認され次第、都道府県知事の権限により殺処分命令が発せられ、これに基づいて処分が実施されます。また、発生養鶏場から半径数〜数十キロ圏内の他の養鶏場で飼育されている鶏の検査、および未感染であることが確認されるまでの間、鶏自体や鶏卵の移動を自粛する要請を行います。