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【債券の運用】 資産運用に便利な個人向け国債

 安全性という点では国債は最も優れた金融商品だと言えるでしょう。政府により発行され、元本や利払いが保証されているため、償還期日に額面を回収できない危険性がほかの金融商品と比較して低いと考えられます。

 安全性は高いのですが、これまではあまり個人投資家には浸透していませんでした。浸透を妨げた理由のひとつは換金の際のリスクにあります。ご存知の通り、国債のような利回りが確定している債券は市中金利が上昇すると、時価が低下する性質を持っています。市中金利が低下している環境であれば問題ないのですが、景気が良くなったりして金利上昇局面が訪れると価値は下がります。このタイミングで国債を売却すると、当初の元本を割ってしまう可能性があるのです。

 元本を割るリスクを排除しようとすれば、金利低下のタイミングをはかって換金するか、満期まで保有するかのどちらかしかありません。銀行や投資顧問会社等の機関投資家であれば、このような状況を十分にコントロールできるのですが、個人ではそうもいかず、結果として人気が出なかったと言えましょう。

 個人向け国債は換金性すなわち流動性に配慮した、個人にもやさしい国債です。しくみは次のようになっています。

個人向け国債のしくみ
  • 種類:変動金利型10年満期、固定金利型5年・3年満期
  • 発行者は日本国政府なので安全である。
  • 額面金額は1万円なので小口投資にも対応している。
  • 年に2回の利払いがあるのでキャッシュフローが必要な投資家に対応している。
  • 中途換金が従来の国債よりも有利にできる。
  • 利子所得については利払い時に20.315%の税金(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)がかかる。

 中途換金については少し注意が必要です。基本的には、換金時も元本は“ほぼ”安全と考えて良いのですが、いくつかの留意点があります。

 一つ目の留意点は換金時期です。個人向け国債の発行後1年を経過するまでは、保有者が死亡しない限りは換金できません。1年間は流動性がないと考えなければなりませんので、短期的に使用目的がある資金では投資できません。1年たてば基本的にいつでも換金できます。

 二つ目の留意点は換金方法です。換金する際の算式をみていただければ、ポイントがおわかりになると思います。

換金価格の算出式
 換金価格 = 額面金額 + 経過利子相当額 − 直近2回の利子相当額

  この式が表現しているのは「換金時において、額面通りの金額と、それまでの利息はきちんと払いましょう。でも、中途換金ですからペナルティとして直近2回分の利子は減らします」ということです。中途換金ができる1年経過後までには利払いが2回分ありますので、理屈の上では1年経過後すぐに換金したとしても、利払い分が帳消しになるだけで元本は守れそうなのですが、差し引かれる利子相当分は税引き前で計算されますので、利払い時の税金分だけ元本を割る可能性が残るのです。十分に長い期間にわたって保有しておけばこのような心配なく換金できます。

 その他、購入できる募集期間が限られていることや、単純な利付国債よりは利率が低くなる点等の留意事項さえ押さえてしまえば、個人向け国債は個人の資金運用には便利な商品といえます。

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