かつては高級なイメージで、お祝いやイベント時に飲むことの多かったワイン。ところが、最近は、格安のワインが数多く販売されると同時に、気軽にワインを楽しめるワインバルの出現により、ぐっとワインが身近な存在となりました。今やワインバルは、居酒屋と並び、夜の社交場として男女問わず人気の場所となっています。
近年のワインバルブームに合わせ、店の形態も多様化してきています。各店舗、ワインへのこだわりもさることながら、料理のバリエーションも実に豊富。ワインバルが多くの客に支持される人気の理由を探ってみましょう。
気軽に一杯
ワインバルの良さは、なんといっても「気軽さ」にあります。居酒屋だとビール一杯だけとはいかず、お通しにつまみ数品をオーダーしなければという気持ちにさせられますが、ワインバルであれば、ワインのみを楽しんで帰ることだって可能。また、そのフランクさを後押ししているのがお店の造りにあります。そのポイントをいくつか挙げてみます。
外からスケルトン
ワインバルの多くは、店内の様子が外からでも分かるようガラス張りであったり、テラス席から奥の雰囲気が覗けたり、扉を解放してオープンにしてあるところがほとんどです。お店の様子が入る前にわかるのも、立ち寄りやすくしている特徴の一つといえます。
店内は小スペース
多くの場合、店内は小規模です。もちろんレストランのような広々とした空間のお店もあるにはありますが、人気のワインバルは、入って店内を一望できる規模感であることがほとんどです。また、カウンターの作りと合わせて奥に細長いスペースのところも多く、お店と客との距離感がどことなく近くて、アットホームに感じられるのも、気取らずに入れる理由のようです。
スタンディングと簡易的な席
バルの基本は立ち飲みです。立ち飲みオンリーというお店もありますが、やはり座って楽しみたいという人もいますし、お年寄りの方であれば立ち続けるのはきつい。そこで、色々なニーズに応えられるよう、簡易的な机と椅子を用意しているお店も多くみかけます。ささっと飲んで食べて帰りたい人も、長居したい人もどちらにも対応している点が気軽さのポイントといえるでしょう。
料理に手抜かりなし
ワインを楽しむお店だからといって、料理はおつまみ程度に…と思ったら大間違いです。和洋中、前菜からメイン、あげもの、スイーツなどに至るまで、各店舗それぞれ特徴を出しながら、完成度の高い料理を提供しています。ワインだけではない料理の美味しさもワインバルの人気を支える重要なポイントです。
前菜
サラダ、ブルスケッタ※1、ポテトサラダ、盛り合わせ、チーズ各種、バーニャカウダ※2などワインと軽くつまめるメニューが主流です。
※1 ブルスケッタ:焼いた一口サイズのパンにニンニクをこすり付けオリーブオイルをかけたものや、さらに肉、野菜、チーズ、ハーブなどをトッピングしたイタリア料理。
※2 バーニャカウダ:野菜にアンチョビ、ニンニク、オリーブオイルなどのディップソースを添えたイタリア料理。
焼き物
砂肝のコンフィ※3、グリル野菜、魚&肉のオーブン焼きなどもよく見かけます。また肉を炭火でじっくり焼く肉をメインにワインを楽しむ「肉バル」などもあります。
※3 コンフィ:オイルに浸して低熱で加熱するフランス料理の調理法。
煮込み
ワインとの相性も抜群で、煮込みにワインを使うこともあるため、バルの定番メニューともいえます。なかでも牛すじの赤ワイン煮込みやアヒージョ※4はよく見かけるメニューです。
※4 アヒージョ:耐熱容器に入れた食材にニンニクとオリーブオイルをかけて加熱したスペイン料理。
揚げ物
唐揚げなどチキン系の揚げ物が目立ちます。また、フライドポテトも定番でありながら、店によってアレンジが違うのでぜひ注目してほしい一品です。スパイシーだったり、サワークリームやアンチョビソースがかかっていたり、そこオリジナルのポテトを楽しんでみてはいかがでしょうか?
パスタやリゾット
パスタは各店舗実に種類がさまざまです。ワインと合わせるとなると、さっぱり系よりはわりと濃厚なクリーム系が好まれる傾向にあります。
スイーツ
女性も大好きなワインバルゆえ、自ずとスイーツにも力を入れている店が多いようです。アイスクリームやジェラート、ケーキ各種、他にもその店舗オリジナルのスイーツがあり、実はそこにしかない隠れた絶品メニュー!ということもあるので、ぜひスイーツも含めて楽しんでほしいです。
大衆的な金額で
フレンチやイタリアンのように、少し背伸びして、ここぞ!という時に行くお店では、コース料理など、ワインや料理一品一品の金額設定が高く、ある程度の出費を覚悟していかなければいけません。ところが、ワインバルはワイン一杯、ワンコイン500円に設定しているところもあるなど、料理含めても一人2000〜3000円で十分楽しむことができます。懐具合をあまり気にせず、デイリーに飲み食いできる大衆酒場のような店であることも魅力の一つです。
自然派ワイン、Bioワインという言葉を聞いたことはありませんか? ワインのなかでも、最近人気の高いこちらのワイン。自然派ワインだけを取り揃えた専門バルも少なくなく、それを目当てに訪れるお客さんも多いようです。
原料はオーガニックのぶどう
自然派ワイン、Bioワインは、ヴァン・ナチュールとも呼ばれ、「有機栽培で育てたぶどうを、限りなく人為的、科学的介入を排して作ったワイン」のことを言います。
Bioという言葉からもなんとなく想像できるように、原料になるぶどうは農薬や化学肥料が使用されていない環境で育ったオーガニックであるものが前提。
でも、オーガニックワインとは違う
自然派ワイン、Bioワイン、ヴァン・ナチュールと呼ばれる者とは別にオーガニックワインというものがあります。では、オーガニックワインと何が違うの?と言うと、それは醸造過程に差があります。
例えば、オーガニックワインと呼ばれるものには、素材であるぶどうがオーガニックであっても、それをワインにする醸造段階で、酸化防止剤を使用するケースがあります。人工的添加物を極力控え(もしくは使わない・無添加)、限りなく自然な方法で作られたワインが、自然派ワイン、Bioワインといいます。とはいえ、「自然」の定義づけや条件は各国、地域によって違うので、そこは各々差があることを理解しておきましょう。
口当たりはまろやか
自然派ワインは、口当たりまろやかで飲みやすく、ワイン本来の味を楽しめるとしてワインが苦手な人でも飲める、など人気を集めています。
ワインの効果・効能はよくメディアでも取り上げられるところです。抗酸化力の高いポリフェノールを多量に含むワイン(特に赤ワイン)は1日1杯で、色々な健康管理に役立つと言われています。いくつかご紹介しましょう。
動脈硬化やがん予防に
ポリフェノールは血液をサラサラにして、動脈硬化やがん予防にも効果的と言われています。なかでも近年発見されたレスベラトロールというポリフェノールの一種。これが、抗がん作用に有効だと言われています。また、ワインにはミネラルが多く含まれ、脳細胞の活性に役立つマグネシウムやカリウムが豊富であることから、認知症やアルツハイマー予防に役立つという説もあります。
美肌にも
にきびやシミといった肌の老化は活性酸素も原因の一つ。ワインに含まれるポリフェノールやプロアントシアニジンによる抗酸化作用がこれを除去してくれるので美肌にも効果的と言われています。また、先にも登場した、レスベラトロールは、細胞の老化を防いでくれる働きもあるようです。
抵抗力向上
ワインを適度に飲む人は飲まない人に比べて、胃炎や潰瘍、感染症といった病気の発症率が低いことが実験結果として出ているそうです。抗酸化作用で血液サラサラも含め、体を健やかに保つ、病気にならないための一つの健康法としてワインを取り入れるのもいいかもしれません。
健康にも良いワインを気楽に楽しめるワインバル。ここ数年で、都心に限らず、地方にも新しい店が続々と出現しています。「こんなローカルな駅にこんなにステキなお店が?」と驚くぐらい、あまり知られていない場所にも優良な店が発見できるのも、ワインバルの魅力と言えるでしょう。なかを覗くと、老若男女、実に様々な方たちが、ワイン片手に料理を楽しんでいる光景が見られます。店主がそれぞれに特徴を出したワインバルでのひとときは、あなたにとって新たな食の扉を開いてくれるかもしれませんよ?
編集プロダクション、WEB制作会社を経てフリーランスに。フード、ファッション、介護などの媒体で、取材・執筆・編集を担当。食べることが大好きで、フード系の取材は多い月で30件にも及ぶ。最近では横浜の農を普及する「はまふぅどコンシェルジュ」を取得。月刊誌「カフェ&レストラン」(旭屋出版社)では、野菜がおいしいお店を紹介する『VegiLove』を連載中。
http://www.asahiya-jp.com/cafe_res/