今では目にするのも当たり前、都心においては徒歩圏内に何店舗も店を構えるようになったコンビニ。また逆に、最寄りにコンビニしかない地域においては、生活のライフラインとしてなくてはならない存在になっています。かつて、小さい子供がお小遣いを握りしめ駄菓子屋に向かった先がコンビニに代わり、学生の学校帰りの買い食いもコンビニ、サラリーマンやOLの昼食利用、そして高齢者の食卓までいまやコンビニのお弁当にお惣菜といった光景が増えつつあります。
しかし一方で、コンビニ食品に含まれる添加物を心配する人も多いようです。また、コンビニが便利だからとそれだけの食事を続けることで栄養が偏り健康を損なう恐れもあるようです。
高齢者の食卓にも変化が
勝手ながら、コンビニは若者の象徴、高齢者にはあまり縁のないイメージがありました。というのも、世の中がこれほど便利になる前、家庭のご飯は、手作りのご飯が当たり前だった時代を生きてきた高齢者の方々にとって、出来合いのコンビニ食は遠い存在なのだと思っていました。ところが先日、祖母の家を訪れた時に見ました。食卓にはコンビニのおにぎりとお惣菜があったのです。
祖母は「足が悪くなってきて、あまり出歩けないから」そして「作るのが面倒…」という理由で最近よく利用しているとのことでした。それまで、手作りをメインにし時には外食、という生活スタイルをしていた祖母宅の食卓事情がすっかり様変わりしていたのです。それ以降、注意して見てみると、出てくる、出てくる、高齢者のコンビニ利用についてのエピソード!こうした現状は、どうやら祖母宅だけではないようです。
- ◆「1人暮らしなので、ヘルパーさんが来て食事を作ってもらう以外は、コンビニで購入してもらうことが多い(70代)」
- ◆「夫に先立たれ、娘と二人暮らし。仕事帰りで遅い娘が買ってきてくれたコンビニ弁当を一緒に食べることもしばしば(60代)」
- ◆「ご飯を作るのが面倒な時は、コンビニでパンやお惣菜を購入。量もちょうどいいし、よく利用している(60代)」
- ◆「車で20分かけないとスーパーまでは行けない距離。ちょっと歩いていける距離にコンビニが1店だけあるから、毎日のように利用している(50代)」
コンビニ利用、若者は減少・高齢者は増加
実際、下図のような調査結果があります。大手コンビニメーカー、セブンイレブンにおける「来客年齢階層比」。これを見ると、年々50歳以上の利用が増加し、一方で、意外にも、20歳代、30歳代などの利用が減少傾向にあることが見てとれます。これは、20〜30歳代の働きざかり世代はフットワークも軽く、行動範囲も広いがゆえに、ランチに関してもコンビニ以外の選択肢を取りやすいということが要因の1つだと考えられます。若者がランチにコンビニを利用する理由の1つに「安さ」があります。しかし、コンビニを利用する利点である「安さ」が、今では外食でも同様に得られる時代になっています。以前にご紹介した500円ランチもその最たるものです。そうして、いろいろ出歩ける若者にとっては、コンビニだけが「安くて気軽」にはならなくなってきていることが数字に顕著に表れています。
一方で、年齢を重ね身体的な衰えとともに、行動範囲が狭まり、また家族が巣立つことで、大勢の料理を作る必要がなくなった1人暮らしなどの高齢者にとっては、1食分を気軽に買えるコンビニは非常に便利といえるようです。
■図 セブンイレブンにおける来客年齢階層比
<セブン&アイホールディングス「コーポレートアウトライン2012」より>
「若者のコンビニ離れ」といった言葉もささやかれるなか、少子高齢化に伴い、今後ますますの高齢者のコンビニ利用が増えていくことを見込んで、各大手メーカーはさまざまな取り組みを行っています。もちろん、対象は高齢者のみならず。若者を改めて呼び戻すための努力も多々見受けられます。いくつか、特長的なサービスをご紹介しましょう。
セブンイレブン—宅配サービスやプライベートブランド
■セブンミール
CMでも記憶に新しいお弁当配送サービス『セブンミール』。まさに、単身世帯の高齢者をターゲットにしたサービスといえます。介護を必要とする高齢者や、あまり出歩けない方々にとって、自宅までお弁当やお惣菜を届けてくれる有難いサービス。コンビニで販売している商品の他にも、米や野菜などの生鮮食品に至るまで、その種類は幅広く、スーパー並の品揃えです。またお弁当にいたっては、カロリー、塩分濃度表示も。お弁当の種類も色々で、惣菜だけのセットや飽きがこないように日替わりメニューもあります。
■セブンプレミアム
宅配サービスの他に、店舗でも取り扱いのある、セブンプレミアム。これはセブンイレブンのプライベートブランドで、なかでも1〜2食分ぐらいのおかずやお惣菜が目をひきます。例えば、肉じゃが、ポテトサラダ、生姜焼き、鯖の味噌煮、カット野菜、五目チャーハンなど種類も豊富です。どれも100〜200円前後とお手頃価格。そのままパウチを開ければ食べられたり、レンジでチンするだけ、といった手軽さが受けて、高齢者のみならず、主婦やOLにも多く利用されているようです。
ローソン—健康志向の商品
■ナチュラルローソン
健康意識の高い人々(特に女性)をターゲットにした、プレミアムなコンビニです。こだわりの食材で作ったお弁当やお惣菜の他、パン屋で販売しているようなデニッシュやベーグルなどもあります。水の常温販売や素朴な素材で作られた国産原料のお菓子など、体に気を遣う女性のツボをおさえたラインナップに、ファンも多く、他のコンビニと一線を画し支持されているようです。また、日用品の販売などでは、合成界面活性剤を使用していないものといった環境にも配慮した商品を揃える点も他社との差別化が伺えます。
ファミリーマート—高齢者向けの商品開発
■おとなコンビニ研究所
高齢者をターゲットとして「これからのおとなの生活を考える、提案する」をコンセプトに立ち上げられたファミリーマートのプライベートブランドです。セブンプレミアム同様、お弁当やお惣菜の他にスイーツ系にも力を入れており、様々なパターンで1〜2食分を販売しています。レギュラーラインとプレミアムラインがあり、プレミアムラインの商品は値段が少し張るものの、味における満足度もかなり高いようです。
添加物を意識して
利用頻度に差こそあれ、大抵の人はコンビニ利用経験者でしょう。今の時代においてコンビニご飯はもはや当たり前となっています。でも、その前に知っておきたい「添加物」の話があります。
以前、コンビニの製造工場で働いていた友人と出会った時のことです。「おにぎりにはかなりの添加物が使われているんだよ。それ以来、私はコンビニおにぎりが食べられなくて…」と私に言いました。その話を聞いて愕然。それまで、家で作るおにぎりとの違いは、手握りではなく機械で成形されていることぐらいで、そんなに大差ないと思っていたからです。今では、様々な情報がネットやメディアに流れているので、そうした事実を知っている人も多いかもしれません。それはおにぎりに限らず、コンビニ食の多くが添加物を使用していると考えた方がいいでしょう。またコンビニ食に限らず、知れば知るほど、私達が口にしている多くのものに添加物が含まれています。食中毒が起こらないよう、一定の品質維持をするためには致し方のないことです。しかし、その事実を知らずに選ぶのと、知っていて選ぶのとでは大きな違いが生じます。
手作りを上手に取り入れよう。
今までお話してきた、高齢者のコンビニ利用の増加、コンビニ各社が提案するこだわり商品、添加物のお話…これら全てをふまえて、おすすめしたいのがセルフとコンビニの両活です。1食分全てを丸々コンビニで済ませるのではなく、そこに少しの手作りを取り入れるという提案です。
■おにぎりは手作りで
特に、サラリーマンやOLの方におすすめなのが、「おにぎりだけ持参、あとはコンビニでお惣菜をプラス」です。お弁当を作るのはハードルが高いものです。でも、おにぎりであれば、1〜2分もあれば作れるものです。しかし、それすら面倒な人は、タッパーにご飯だけつめて持参してもいいわけです。そこに、好きなコンビニのお惣菜やサラダなどを加えればいいでしょう。先に紹介したようなお弁当コーナー以外のパウチ系惣菜も含めると、組合せは色々です。電子レンジが会社にある人はさらに選択肢も増えるはずです。また、おにぎりは、具だけでなく、玄米や黒米、五穀米といった、お米にもこだわれば、にぎる楽しさもアップします。
■おでんを活用しよう
寒い冬の時期だけでなく、最近では夏でもおでんが販売されている事実をご存知でしたか?当然のことながら「売れるから」なのですが、その理由の1つに、夏の冷房による冷えがあります。特に女性は男性に比べて体温も低めなようです。室内の冷房で冷えた体を温めるために、温かい食べ物を求める、といったパターンが多いようです。また、おでんの良い所は、大根やこんにゃく、はんぺんなど素材を活かしているため、とってもヘルシーなことです。また、自分で選んでよそう場合、スープの量は多めがおすすめです。汁は野菜から出た旨味もいっぱいなので、立派なスープの代わりになります。これにおにぎりなどのご飯を合わせていただきます。自宅であれば、魚を焼いたり、野菜いためなど1品おかずを追加してもよいでしょう。体も温まり、栄養バランスのよい食事になるはずです。
■たっぷりのスープを
最近スープ用の魔法瓶が数多く販売されています。健康志向の高い人にスープ持参が高まっているためです。スープ専用の魔法瓶に、材料を切って入れるだけといったお手軽スープレシピ本も発売され、いまやスープ人気が急上昇中。具だくさんなミネストローネや中華スープなどを持参して、あとはコンビニで気軽にパンを購入してもよいでしょう。自宅であれば、野菜たっぷりのスープを大量に作っておいて足りない分をコンビニで購入するとよいでしょう。十分満足度の高い1食になるはずです。
編集プロダクション、WEB制作会社を経てフリーランスに。フード、ファッション、介護などの媒体で、取材・執筆・編集を担当。食べることが大好きで、フード系の取材は多い月で30件にも及ぶ。最近では横浜の農を普及する「はまふぅどコンシェルジュ」を取得。月刊誌「カフェ&レストラン」(旭屋出版社)では、野菜がおいしいお店を紹介する『VegiLove』を連載中。
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