なにげなく食べている食事も、ある「ルール」を守るとダイエットや生活習慣病の予防に役立つことがあります。
今回は、すぐに実践できる「健康づくりのための食べ方のルール」についてご紹介します。
満腹感を得て食欲増進ホルモンを抑える
最初にお茶や汁物(味噌汁やスープ類)を飲み、それから具を食べます。この方法により水分を多く取ることでお腹が膨らみ、また胃から食欲を高めるホルモンが分泌されるのが抑えられるのでダイエットに向いています。 お茶は湯飲み半分〜1杯程度が目安です。味噌汁やスープ類はお椀1/3程度が良いでしょう。これは味のついている汁物は塩分が多いからです。最初から汁をお椀に1/3程度入れて具を中心に盛りつけましょう。 味噌汁などは具を3種類以上入れるのもコツです。具にする野菜やきのこ・海藻類の種類は何でも構いません。これら野菜類は、カリウムを多く含んでいます。カリウムは余分な塩分を外に排出する働きを持っているので、塩分の取り過ぎを防いでくれます。具が多いと汁物の水分が少なめでも満足感の高いものになります。水分不足は血流の悪化のもと
水分が多いと「水太りになる」と心配になる方もいますが、これは誤解です。一時的に水分を減らしても、その分体重が減っただけで体の脂肪が減るわけではありません。また水分は生命の維持に必須のもので、一定の量を体に貯めておくように体が自然に働くのです。ですから水分を取ることを我慢していても、必ずのどが渇いて水分が欲しくなります。しかも、この水分量を管理する体内のシステムは綿密で、余分な水分はやがて尿として出て行ってしまうのです。つまり、水分で太ることはありません。逆に水分が少ないと血液が凝縮されてしまいます。すると、脳梗塞や心筋梗塞の原因になる血栓(血のかたまり。血管の内側に出来て、血管内の血流を悪くします。最悪は、血管を詰まらせるもの)が出来やすくなります。
水分摂取とむくみ
もしも、むくみを感じたら水分の取り過ぎではなく、心臓や腎臓に病気が隠れているかもしれないので病院で受診しましょう。むくみは、腫れている場所を指で押さえて、すぐに元に戻るのが正常です。あるいは腫れていても1日寝たら元に戻っていれば心配ありません。指の形がそのまま残るようではむくみの黄色信号です。
噛むことで満腹感を得る
噛む回数が増えると脳に刺激が行き、満腹感が得やすくなります。刺激の量が多いほど早いうちに満腹感が出てくるので、食べ始めに固い食品を食べると適度な食事量、あるいはいつもより少なめでも満腹感が出やすくなります。
三食以外に食べる「おやつ」などは、甘い物やスナック菓子などが多く、少しの量でも侮れないエネルギー(カロリー)量があります。食物繊維をたっぷり食べていると、満腹感が長持ちするために「おやつ」を食べたくなるような食欲が抑えられます。
特に寝る前の「おやつ」や「おつまみ」には要注意です。これらを食べた後には寝るだけなので日中のような活動をしません。つまり、体を動かしてエネルギーを消費しないので、そのまま脂肪になってしまいます。このことから、特に夕食には固い、食物繊維の多い食品を取り入れるようにし、寝るまでの間に「小腹が空いた」というようにならないようにしましょう。
病気の予防に
食物繊維は、便を柔らかくして、カサを増やす働きと、腸の便を排出する動きを助け、腸内の善玉菌の働きを助ける3つの効果を持っています。便秘解消に非常に役立ち、免疫力をアップさせ、下腹がぽっこり出るのを防いでくれるのです。このほか、余分なコレステロールを排出する働きがあるので、脂質異常症(高脂血症)を防ぐ働きがあります。余分なコレステロールは血栓を作ってしまうので、食物繊維で追い出してしまうと良いでしょう。
同時に、食物繊維には発がん性物質や体にとって好ましくない有害物質を外に出してくれます。
朝食は必ず食べる
朝食は1日の食欲をコントロールします。朝食を抜くと、その分食事からのエネルギーはカットされるので一見ダイエットに良いように思えます。しかし、朝食を食べないでいると昼食の時に空腹感が大きくなってしまい、空腹感が強くなっている状態で昼食を食べると、必要以上に食べてしまったり、慌てて食べて早食いになり、よく噛まくなってしまいます。よく噛まないと脳への満腹感を感じさせる信号がなかなか届きません。するとたくさん食べないと満足できなくなって、昼食の大食いを招いてしまい、ダイエットには逆効果なのです。
とても早く食べる人ととてもゆっくりと食べる人では平均体重の差に5.9kgの差があるという研究報告があります。昼食の早食いを招いてしまう「朝食を食べない」という食生活は改めましょう。
また、人間は体内時計というものを持っています。これは日常生活の1日24時間というリズムより1時間遅い1日25時間で動いているのです。このズレを放置しておくと体内時計が夜型になってしまいます。夜型になると体内時計が持つ時計遺伝子の影響で、夜あるいは深夜に食欲が沸いてきます。しかも食べ出したら止まらないような大きな食欲が出てきてしまいます。この体内時計のズレを元に戻して朝型にするのが朝食です。朝に食事をすることで体内時計のズレを毎日リセットさせているのです。
朝食を食べることはひいてはダイエット効果があり、体重を適切にすることで血圧が下がる効果もあるのです。
美味しいと感じられる量を入れる
食物繊維やビタミンB類を摂取
特にお勧めはビタミンB類が入っているものです。精白米(通常のお米)よりもビタミンB1などが多く得られます。ビタミンB1にはご飯や麺などの炭水化物をエネルギーに変えて発散させる効果があるため、疲労回復やダイエット効果があります。
食パンも、白いパンよりもライ麦、小麦ふすま入りなど雑穀を使ったパンがお勧めです。これらも食物繊維が多く得られます。ほかにも、玄米を多く使ったフレークなどもあり、食物繊維のほかビタミン類やカルシウム、鉄などが得られます。同時に使う牛乳からもカルシウムやタンパク質が得られるメリットもあります。
なお、穀類から得られる食物繊維には生活習慣病全般を予防する効果があることがわかっています。その意味でも主食で雑穀を食べるようにしましょう。
体温を上げる
生命の維持に欠かせない栄養
コレステロールや脂肪の心配は?
タンパク質源となる食品はコレステロールが多い食品があります。日本動脈硬化学会では、高コレステロール血症と診断されていなければ、コレステロールを多く含む食品を回避しなくても良い、と声明をだしています。食べる食品数が増えることは栄養のバランスを整えます。該当しない人は生活習慣病予防のために、コレステロールの含有量よりも、同時に含まれる脂肪の多さに着目して食品を選ぶのが良いでしょう。
寝る前に温かい牛乳を飲む
ストレスが多いと「やけ食い」「やけ酒」など必要以上に飲み食いしてしまいがち。これが体重オーバーやコレステロール、中性脂肪、血糖値、血圧を押し上げてしまいます。特にストレスが強いと血圧が上がりやすくなるので要注意です。このストレス解消に非常に効果的なのが睡眠です。安眠のためには、寝る前に温かい牛乳を飲むことをお勧めします。
熟睡するには寝る前の精神的な安定が必要ですが、それには自律神経を落ち着けなければなりません。自律神経は、日中を積極的に活動するために興奮モードになっています。それをリラックスして落ち着いた状態に切り替えるのが温かい牛乳です。人肌より熱めが目安で、フーフー冷ますようでは暖め過ぎです。「飲んで暖かい」という温度はきっちり守りましょう。
さらに、牛乳はトリプトファンが豊富に含まれています。トリプトファンは神経伝達物質であり、脳内幸福物質とも呼ばれるセロトニンの材料になります。セロトニンは精神的なストレスに対抗する力があり、脳内に充分にあるとストレスが軽くなったり、暗く落ち込んだ気持ちが明るく上向きに変化させます。しかし、セロトニンはストレスがかかるほどに消費されてしまいます。日中のストレスによって消費されてしまうセロトニンをどんどん補給するには材料となるトリプトファンを牛乳から取り込むのが効率的です。しかもトリプトファンは安眠を促すホルモンであるメラトニンの材料にもなります。
熟睡をしてストレスを解消することが、「やけ食い」「やけ酒」を遠ざけ、ダイエットや生活習慣病予防に効果をもたらします。
牛乳アレルギーがある人はほかの温かい飲み物で代用しましょう。牛乳以外でトリプトファンがしっかりと取れる飲み物はありませんが、睡眠を邪魔するカフェインの含まれていないドリンクを選びましょう。ココアやハーブティー、ノンカフェインタイプのコーヒーなどがお勧めです。
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。