近頃では、サプリメントが美容や健康な生活をサポートするものとしての期待が大きくなってきています。その背景には食生活への不安のほか、「より健康でありたい」という意識の高まりが出てきているのではないでしょうか。
サプリメントの中には、多種多様な健康状態に対応する成分を配合したものが多くあります。今回は、食生活そのものの見直しや栄養のアンバランスの軌道修正とは性格が異なる「目的別」サプリメント類について、その問題点や注意点をご紹介していきます。
食べたい、でも痩せたい
ダイエット効果をイメージさせるサプリメントには、大きく分けて2種類あります。1つは口から取り入れた食事のエネルギー(カロリー)を「燃焼」させて余分な摂取カロリーを発散させてしまうタイプ。もう1つは、カロリーの吸収をブロックさせて、カロリーの摂取量そのものを少なく抑えてしまうタイプのものです。どちらの種類でも、食事内容については触れず、いまの食事に追加して使用することで体内で吸収されるカロリーを抑えてダイエット効果を狙っているものです。
サプリメントでカロリーカット?
一般的に、ダイエットは食事の摂取カロリーをセーブし、運動や日常活動によるカロリー消費を増やして適正な体重にするものとされています。しかし、これらのサプリメントの魅力は、例え高カロリーな食事をとっても余分なカロリーをカットするため、面倒な運動も必要としないということです。サプリメントに使用されている成分は多種多様で、メーカーによって独自の種類と量が配合されています。また、折々に特定のダイエット方法が脚光を浴びると、その方法にマッチし、注目されている成分を多く配合したサプリメントが早々に登場してきます。
サプリメントだけでは痩せない
しかしながら、ダイエット効果を狙ったサプリメントだけを使用して痩身効果が認められている製品は現在のところありません。「このサプリメントで痩せた」という経験をお持ちの方もあるかもしれません。しかし、ダイエットを決意してのサプリメントの使用です。同時に食事内容を見直したり、運動量を増やすなど、通常のダイエット方法と併用して行っていたことは少なくありません。よく、ダイエット効果があり、素敵なプロポーションに変化を遂げた人物を紹介してPRしている商品も見かけます。しかしその広告をよく読むと、サプリメントと同時進行で食事内容のコントロールや運動を併用してのダイエット効果であることが小さめの文字で書かれています。
裏返すと、メーカー側もサプリメント単独だけではダイエット効果を得られるのは難しいとしているのではないかと推測できます。現在市場に出回っているダイエットに関するサプリメントについては、単独での使用でダイエット効果を得るのは難しいかもしれません。
本来のダイエットの目的は「適正な体重にすること」に付け加えて、「落とした体重を維持すること」も重要であることを憶えておきましょう。
注意!!
薬事法が適用されていない海外輸入品については、健康被害が起こる可能性が高い傾向があるので控えましょう。特に肝臓への健康被害が多く、最悪の場合、死亡事故に至る危険性もあります。このような健康被害情報については厚生労働省のホームページで見ることができます。 (http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/musyounin.html)
ヒアルロン酸は検証不十分
代表的な成分が「ヒアルロン酸」と「コラーゲン」です。
まず、ヒアルロン酸は、肌のハリ改善とひざ関節の痛み改善に人気のあるサプリメントの1つです。医療用医薬品としても用いられている成分ですが、口から摂取した場合はどうなのでしょうか。
消費者庁による「食品の機能性評価モデル事業」の結果報告があります。この中で、皮膚の保湿効果については、十分に検証されていると言い難く、体内でどのように作用しているかなどの説明がないとして結果は「C」でした (A、Bが信頼できる高評価、Fまであり)。
同時にひざ関節痛改善効果につても調査があり、論文数、研究者が限られている、ヒトに対しての効果が限定的ないしは否定的であるとし、結果「C」とされています。
つまり、美肌に効果的とされるサプリメントのヒアルロン酸は、「肌の保湿効果に関して可能性はあるけれど、ハッキリとは認められない」というような解釈と言えます。
まず、ヒアルロン酸は、肌のハリ改善とひざ関節の痛み改善に人気のあるサプリメントの1つです。医療用医薬品としても用いられている成分ですが、口から摂取した場合はどうなのでしょうか。
消費者庁による「食品の機能性評価モデル事業」の結果報告があります。この中で、皮膚の保湿効果については、十分に検証されていると言い難く、体内でどのように作用しているかなどの説明がないとして結果は「C」でした (A、Bが信頼できる高評価、Fまであり)。
同時にひざ関節痛改善効果につても調査があり、論文数、研究者が限られている、ヒトに対しての効果が限定的ないしは否定的であるとし、結果「C」とされています。
つまり、美肌に効果的とされるサプリメントのヒアルロン酸は、「肌の保湿効果に関して可能性はあるけれど、ハッキリとは認められない」というような解釈と言えます。
不明な部分が多いコラーゲン
コラーゲンについては、様々な食品から作り出されています。例えばゼリーに使うゼラチンは豚、牛の皮、腱(けん)、骨から抽出されたコラーゲンから出来ています。ほかにも鶏、魚にも含まれています。手羽先が入った煮物を、冷蔵庫で保管して翌日に取り出すと煮汁が固まっていることがあります。これが手羽先からしみ出たコラーゲンです。つまり加熱処理をしてコラーゲンを溶けやすくしたのがゼラチンなのです。
様々な原材料があるなかで、科学的根拠をもって調べられているのは「チキン(鶏)コラーゲン」だけです。『健康食品・サプリメント〔成分〕の全て ナチュラルメディシン・データベース』(総監修 日本医師会/日本薬剤師会/日本歯科医師会 Jahfic)という世界標準のデータベースがあります。このなかではチキンコラーゲンについてのみ取り扱われ、科学的データが不十分とされています。しかも、肌に関しては一切記載がなく、ひざや骨と関節の強化などに対してのものでした。『サプリメント・健康食品の「効き目」と「安全性」』(監修代表 田中平三 同文書院)によると、やはりひざ関節や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について触れてあり、唯一「髪質の改善」についての記述がありますが、これも科学的根拠が不十分とされています。
残念ながら、コラーゲンに関しては不明な部分が多いというのが現状のようです。
逆効果になる恐れも
治療中であっても、健康食品を追加することで、一層の治療効果をあげようとして販売されているものがあります。ここで強調しておきたい重要なことがあります。
サプリメントとして病気治療中に使用している医薬品と併用することで、医薬品本来の効果を狂わせてしまう可能性が高い傾向があります。必ず主治医に「利用目的、種類、量」の全てを伝えることが重要です。医薬品との関係の安全性を確認することは自分自身の健康と正しい治療を受けるために必須。「これを使用して病気を克服した」といった体験談を見聞きする、親族や友人に勧められて信頼して利用している事もあるでしょう。医師になかなか言いづらい、隠れて使用しているという場合もあります。しかし、正直に話すことで主治医との信頼関係を深めることも出来ます。治療の足を引っ張ってしまえば本末転倒です。
サプリメントとして病気治療中に使用している医薬品と併用することで、医薬品本来の効果を狂わせてしまう可能性が高い傾向があります。必ず主治医に「利用目的、種類、量」の全てを伝えることが重要です。医薬品との関係の安全性を確認することは自分自身の健康と正しい治療を受けるために必須。「これを使用して病気を克服した」といった体験談を見聞きする、親族や友人に勧められて信頼して利用している事もあるでしょう。医師になかなか言いづらい、隠れて使用しているという場合もあります。しかし、正直に話すことで主治医との信頼関係を深めることも出来ます。治療の足を引っ張ってしまえば本末転倒です。
アガリクスの抗ガン効果は実証なし
がんに対して人気が高いのが「アガリクス」です。これを例にとって解説していきましょう。独立行政法人国立・栄養研究所にある「健康食品」の安全性・有効性情報を調べると、アガリクスは「抗がん効果がある」「免疫力を高める」などといわれ、健康食品としても多数ありますが、「ヒトでの有効性と安全性については信頼できるデータが見当たらない」としています。同時に厚生労働省のアガリクスを含む製品に関するQ&Aでも「厚生労働省では、ヒトに対する有効性について確認しておりません。」としています。http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/060213-1.html
これはアガリクスがサプリメントといった健康食品、つまり一般の加工食品扱いであるために、医薬品のような効果効能を表示していないので、国が事前に審査をする仕組みがないため、ということが理由なのです。
このように、なにがしか「がん」に効果があるようなイメージをもたせてある成分のサプリメント各種については、加工食品扱いになるために、国がチェックをする体制をとっていません。もちろん、例にあげたアガリクスのほかに、様々な成分に抗がん作用があるのではないかと研究は進められています。しかしまだまだ研究途上であるため、現段階では、どの成分であっても科学的根拠が不十分といえます。
このほか「がんに効く」といううたい文句で、法外な価格で販売されているサプリメントも存在しています。含まれている成分も不明瞭で、もちろん効果が実証されていません。購入にあたっては、専門家である医師や薬剤師に必ず相談しましょう。
認知症にはイチョウの葉エキス?
そのほか、認知症に効果があるのではと期待されているのが「イチョウの葉エキス」です。イチョウの葉エキスについては、『サプリメント・健康食品の「効き目」と「安全性」』によると、アルツハイマー病、認知症、思考能力の向上について、「効くとは断言できませんが、効果の可能性が科学的に示唆されています」としています。しかし、多種類の医薬品との副作用をもたらす側面もあります。ですので、効果に期待はできますが、やはり主治医と相談しての利用が必須となります。注意!!
病院の治療を受けている人が治療効果を上げようと、自己判断でサプリメントを摂取すると、使用している医薬品と反応し副作用を起こしたり、医薬品の効果の妨げになったりすることがあります。治療中の人は、例え健康目的であっても必ず医師に相談し判断を仰ぎましょう。
生活習慣病が狙い目
生活習慣病や日々の健康増進、食生活の乱れに関して対応した商品が多数あります。これらは特定の食品のエキス(抽出物)であったり、特定の栄養素とブレンドしてある、もしくは古くから病気快癒や健康に良いとされている成分であるなど様々です。ですが、どれも科学的根拠があるとは言えません。
(主立った栄養素については
第1回目http://zenshakyo.org/kokorotokarada/feature/feature18.html、
第2回目http://zenshakyo.org/kokorotokarada/feature/feature19.htmlを参照)
(主立った栄養素については
第1回目http://zenshakyo.org/kokorotokarada/feature/feature18.html、
第2回目http://zenshakyo.org/kokorotokarada/feature/feature19.htmlを参照)
表記に注意
サプリメントとして利用するにあたり注意したい点が2つあります。1つは表記されている栄養成分量です。例えば野菜の粒や粉末、一般的に「青汁(粒)」と総称されているサプリメントです。パッケージに1日の目安量などが記載されていますが、表示をしっかりと見ると、1箱(約30日分)で厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量の350gを使用している、となっている場合がほとんどです。たった1箱で1日分程度しか野菜の成分が含まれていないのです。しかもサプリメントに加工する段階で、野菜本来のもつ栄養成分のほどんどが失われています。野菜不足の底上げや、野菜から得られる栄養成分の補給源としては、あまり期待しないほうが良いでしょう。ただし、栄養機能性食品として表示されている商品は特定の栄養成分が一定以上含まれているものです。不足しがちな栄養素の補給を目的に活用するのはすすめられます。表示が認めていられる栄養素はビタミンやミネラル類で、成分の働きについて表記されています。難しい言い回しですが、文言が指定されているために、語尾が「という栄養素です」となっていれば、見分けがつきます。
万能なサプリメントはない
もう1つは、高麗(朝鮮)人参、ローヤルゼリーといった「滋養強壮に良い」というように、万能な効果が期待される成分のものです。どちらも科学的根拠が不十分で効果の可能性が断言できないのが現状です。特に高麗人参は、暴利をむさぼる悪徳商法の商材にもなりやすいものなので、購入に関しては販売業者についても厳重に注意をしましょう。(第1回参照) 従来ある食品のエキス類は、自身が健康であり、なおかつ健康維持の目的であれば、「使用して体調が良ければ、続けてみても良い」という判断になります。健康維持の為にサプリメントを取り入れることで、自然に自分自身の健康への関心が高まり、食生活に良い変化がある場合もあります。ですが、飲めば飲むほど健康度がアップしたり、アンチエイジング効果が得られるわけではありません。特に類似した成分が多く含まれる製品を複数利用すると、取りすぎの弊害がでることもあります。あくまでも、日頃の食生活にプラスアルファするものとして考えておきましょう。
繰り返しになりますが、医薬品との併用は予想外の副作用を起こすことがあるので、自己判断は危険です。必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。
菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。