「最近、なんとなく足腰が弱くなってきた」「歩くと腰や膝に違和感や痛みを感じる」・・・こんなことはありませんか?
そんな人はもしかしたら、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の始まりかもしれません。
ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)は、骨や関節、筋肉などの運動器の機能が衰えることで、日常生活の自立度が下がる状態のことをいい、日本語では「運動器症候群」とよばれています。
日本人の平均寿命は2022年の調査では、男性81.05歳、女性87.09歳と世界で男性第2位、女性第1位です。しかし、一方で、日常生活のなかで何らかの支援が必要である「要支援・要介護認定者」の数も増え続け、2023年度には約690万人となり、この数は介護保険制度が始まった2000年(218万人)から比べると約3.1倍の数字となっています。
これまで、「要支援・要介護」の原因疾患として、脳卒中や認知症が注目されてきていましたが、「関節疾患」や「骨折・転倒」など運動器の障害は、約4人に1人と脳卒中と同等の割合を占めています。(グラフ 「要介護・要支援になった主な理由(厚生労働省「令和2年国民生活基礎調査」)
ロコモティブシンドロームは、自分は元気なつもりでいても将来、介護が必要になったり寝たきりになる可能性が高くなる状態なのです。早い人では40歳代から始まるといわれ、なんの対処もしないと気づかぬうちに徐々に進行します。
日本人の平均寿命は2022年の調査では、男性81.05歳、女性87.09歳と世界で男性第2位、女性第1位です。しかし、一方で、日常生活のなかで何らかの支援が必要である「要支援・要介護認定者」の数も増え続け、2023年度には約690万人となり、この数は介護保険制度が始まった2000年(218万人)から比べると約3.1倍の数字となっています。
これまで、「要支援・要介護」の原因疾患として、脳卒中や認知症が注目されてきていましたが、「関節疾患」や「骨折・転倒」など運動器の障害は、約4人に1人と脳卒中と同等の割合を占めています。(グラフ 「要介護・要支援になった主な理由(厚生労働省「令和2年国民生活基礎調査」)
ロコモティブシンドロームは、自分は元気なつもりでいても将来、介護が必要になったり寝たきりになる可能性が高くなる状態なのです。早い人では40歳代から始まるといわれ、なんの対処もしないと気づかぬうちに徐々に進行します。
ロコモティブシンドロームの原因は、次のようなことが考えられます。
筋力・バランス能力の低下
立ったり、歩いたりという人間の基本的な動作を行うためには、下半身の筋力が必要です。この筋肉が衰えてくると、ちょっとしたことで転倒しやすくなり、それが骨折などの障害につながります。
また、バランス能力の低下も見逃せません。体のバランスを保つためには、目からの情報、筋肉や関節の動きを感知する神経などの様々な情報を脳が統合して体を動かしていきますが、これらのうちのどこかが衰えたり、障害が出ると、体を動かす際にバランスがとれなくなり、歩くのが不安定になり、転倒につながります。
また、バランス能力の低下も見逃せません。体のバランスを保つためには、目からの情報、筋肉や関節の動きを感知する神経などの様々な情報を脳が統合して体を動かしていきますが、これらのうちのどこかが衰えたり、障害が出ると、体を動かす際にバランスがとれなくなり、歩くのが不安定になり、転倒につながります。
骨や関節の病気
骨や関節の病気も、大きな原因です。なかでもロコモティブシンドロームにつながる代表的な病気は次の3つです。
■骨粗しょう症(詳しくは<気をつけたい病気の予防と改善>の「骨粗しょう症」をご覧ください)
加齢や、女性は女性ホルモンの減少などにより、骨が弱くなったり、骨がスカスカになったりする病気です。ちょっとした転倒で骨折したり、背骨が体重を支えきれず、圧迫骨折を起こして痛みが生じることもあります。
■変形性関節症
関節の軟骨がすり減って痛みが起こる病気です。膝や股関節、腰椎などに起こりやすく、多くは歩くときに痛みが生じるため、歩行がつらくなります。進行すると、骨が変形することもあります。
■脊柱管狭窄症
背骨の中には、脊柱管という細い管があり、そこには脳から伸びる神経が通っています。脊柱管狭窄症は脊柱管が加齢や脊椎の変性によって狭くなる病気です。神経は脚につながっているため、腰痛だけでなく、神経の圧迫によって脚にしびれや痛みを起こすことがあります。代表的な症状は「間欠跛行
」といって、しばらく歩くと脚がしびれて歩けなくなり、少し休むと歩けるようになるものです。
骨や関節の病気は、動くときに痛みやしびれを伴うために、行動範囲が狭まって閉じこもりがちとなり、それがまた筋力やバランス能力を低下させたり、関節が弱くなる原因となるという悪循環を繰り返すことになります(図参照)。
骨や関節の病気は、動くときに痛みやしびれを伴うために、行動範囲が狭まって閉じこもりがちとなり、それがまた筋力やバランス能力を低下させたり、関節が弱くなる原因となるという悪循環を繰り返すことになります(図参照)。
■図 運動器低下のスパイラル
ロコモティブシンドロームかどうか心配なかたはチェックしてみましょう。
ロコチェック
日本整形外科学会では、ふだんの生活のなかでロコモティブシンドロームかどうかをチェックする方法として、ロコチェックをすすめています。
ロコチェックでひとつでも当てはまれば、ロコモティブシンドロームの疑いがあります。
ロコチェックでひとつでも当てはまれば、ロコモティブシンドロームの疑いがあります。
項目 | 状 態 | チェック |
1 | 片足立ちで靴下が履けない | |
2 | 家のなかでつまづいたり、滑ったりする | |
3 | 階段を上がるのに手すりが必要である | |
4 | 横断歩道を青信号で渡りきれない | |
5 | 15分くらい続けて歩けない | |
6 | 2キロ程度の買い物(1リットルの牛乳2個程度)をして持ち帰るのが困難である | |
7 | 家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である |
片足立ち上がりテスト
自分の体重を支える筋力が下半身にあるかどうかを調べるテストです。
40cmくらいの安定した台に浅く腰かけ、胸の前で腕を組み、少し前かがみの姿勢になって反動をつけずに、片足で立ち上がります。
ふらつかずに立ち上がれたら、40〜50歳代の筋力があるといえます。階段なども不自由なく上がれるなど、ある程度活発な生活を送れます。逆に、この年代で立ち上がれない場合は、ロコモテティブシンドローム予備群かもしれません。
※無理に試して転んだりしないよう十分注意してください。
40cmくらいの安定した台に浅く腰かけ、胸の前で腕を組み、少し前かがみの姿勢になって反動をつけずに、片足で立ち上がります。
ふらつかずに立ち上がれたら、40〜50歳代の筋力があるといえます。階段なども不自由なく上がれるなど、ある程度活発な生活を送れます。逆に、この年代で立ち上がれない場合は、ロコモテティブシンドローム予備群かもしれません。
※無理に試して転んだりしないよう十分注意してください。
自分にあったロコトレを
自分の脚でしっかり歩ける健康な状態を長く保つためには、ある程度の負荷をかけるトレーニングが必要です。腰や脚が痛いからといって、動かさないでいると筋力が低下して、ますます動けなくなってしまいます。
そこで、推奨されているのが、ロコモを予防したり改善したりするのに役立つロコモーショントレーニング、略して「ロコトレ」です。老化現象は止められませんが、その人に合った適度なトレーニングを続ければ、高齢になっても筋力はある程度維持できるといわれています。
ただ、一方で負荷をかけすぎるとかえって骨や筋肉を痛めたり、事故につながります。自分にあわせたロコトレを行うことが大切です。
また、腰や関節に痛みなどがあったり、悪化している場合には、勝手に判断しないで、医師の診察を受けることです。
そこで、推奨されているのが、ロコモを予防したり改善したりするのに役立つロコモーショントレーニング、略して「ロコトレ」です。老化現象は止められませんが、その人に合った適度なトレーニングを続ければ、高齢になっても筋力はある程度維持できるといわれています。
ただ、一方で負荷をかけすぎるとかえって骨や筋肉を痛めたり、事故につながります。自分にあわせたロコトレを行うことが大切です。
また、腰や関節に痛みなどがあったり、悪化している場合には、勝手に判断しないで、医師の診察を受けることです。
今日から始めてみよう ロコモーショントレーニング(ロコトレ)
■開眼片足立ち
○支えが必要のない人の場合
片方の脚で立つ。上げる脚は床につかない程度に保つ。左右各1分間ずつ、1日3回程度。
(安全のためにつかまるものがあるところでやるとよい)
○支えが必要な人の場合
机に両手をついて行う。慣れてきたら支えを指だけにし、支えにたよらないようにする。
片方の脚で立つ。上げる脚は床につかない程度に保つ。左右各1分間ずつ、1日3回程度。
(安全のためにつかまるものがあるところでやるとよい)
○支えが必要な人の場合
机に両手をついて行う。慣れてきたら支えを指だけにし、支えにたよらないようにする。
■スクワット
○支えが必要ない人の場合
・脚をかかとから30度くらい外に開き、椅子に腰かけるようにお尻をゆっくりおろす。
・膝がつま先より前に出ないように。膝はつま先の方向に向けたまま曲げ伸ばしする。
深呼吸するペースで5〜10回。これを1日3回程度。
※正しいスクワットのポイント
膝が前に出るスクワットは膝の痛みが起こりやすい。イスに座るときのように腰を後ろにひくのが正しい方法。
○支えが必要な人の場合
ご自分の状態に合わせて(A)か、より負担のかからな(B)のどちらかを選びましょう。
(A)机に手をついて立ち上がる動作を繰り返す。
(B)机に手をついて腰を浮かす動作を繰り返す。
・脚をかかとから30度くらい外に開き、椅子に腰かけるようにお尻をゆっくりおろす。
・膝がつま先より前に出ないように。膝はつま先の方向に向けたまま曲げ伸ばしする。
深呼吸するペースで5〜10回。これを1日3回程度。
※正しいスクワットのポイント
膝が前に出るスクワットは膝の痛みが起こりやすい。イスに座るときのように腰を後ろにひくのが正しい方法。
○支えが必要な人の場合
ご自分の状態に合わせて(A)か、より負担のかからな(B)のどちらかを選びましょう。
(A)机に手をついて立ち上がる動作を繰り返す。
(B)机に手をついて腰を浮かす動作を繰り返す。
そのほか、こんな運動もおすすめ
- ○ウオーキング
- ○ストレッチ
- ○関節の曲げ伸ばし
- ○ラジオ体操
- ○太極拳
- ○水泳
監修:医療法人一心会伊奈病院整形外科部長
NPO法人高齢者運動器疾患研究所代表理事 石橋英明
NPO法人高齢者運動器疾患研究所代表理事 石橋英明