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【元気な暮らし】 五月病の季節

5月に入って、入社式や入学式、あるいは転勤など、さまざまな転機を越えてほっとしている人も多いのではないでしょうか。安堵感とともに、張り切ってきたつもりなのに何となく気持ちが晴れない、からだが重い、そんな人はいませんか?

(神経内科医師・医学博士 米山公啓)

五月病は5月だけではない

スチューデントアパシー(学生の無気力症)、サラリーマンアパシー(サラリーマンの無気力症)とも呼ばれる五月病は、難関を突破し達成感が薄れることにより意欲がなくなってしまったり、新しい環境に慣れないことで、うつ的になることをいいます。入社後や入学後の5月が代名詞になっていますが、こうした状況下においては5月に限らずいつでも起こり得る現象です。

1.五月病って病気なの?
2.五月病にならないために

1.五月病って病気なの?

五月病とは?

五月病は、新人社員や大学の新入生などが、試験勉強をがんばり、希望の会社や大学に入って環境が変わり、しばらくすると無気力になってしまう状態をいいます。5月の連休ころにその症状が出やすいので、「五月病」と呼んでいます。
医学的に特別な定義はありませんが、軽度のうつ病も含まれます。うつ病と違うのは、五月病は環境に慣れてくるうちに次第に解消されることが多いという点です。もちろん五月病も個人差があり、重症化しうつ病に発展する恐れはあります。五月病は「病気の入り口」とも言えるでしょう。長引く人は精神科や心療内科等で診療を受けることをお勧めします。


【事例】
Sさん(22歳・男性)は中学のころから成績がよく、有名大学を優秀な成績で卒業し、希望する大手の商社に就職しました。ところが5月になってから、特に理由もなく会社へ行きたくない日が続きます。4月のころは、今日も頑張ろうという気力に満ちていたのですが、朝からなんだか疲れた感じでやる気が起こりません。睡眠も十分に摂れず、食欲もありません。会社へ行っても意味もなく焦りや不安感が出てきてしまうのです。
これが五月病の典型例です。


五月病と脳の関係

誰でも目標を達成してしまうと、一種の喪失感が起きます。
目標を持っているときは脳内にドーパミン(快の感情を増幅させる神経伝達物質)が分泌されているため、意欲に満ちています。ところが目標が達成されてしまうと、ドーパミンの分泌がとまり、何もやる気がなくなってしまうことがあります。

こんな症状が出たら要注意

症状はうつ病と同じですから、朝から気力が出ない、何をやっても楽しくない、会社へ行きたくない、学校へ行く気がしない、考えがまとまらないなどの症状が典型的です。特に、まじめに仕事や勉強に取り組もうとする一方で、いままではうまくやってこれたのに、新しい環境ではどうもうまくいかないというジレンマに陥ったとき、五月病の症状が出やすくなります。
また、自分の希望の会社や大学に入ったにもかかわらず、わけのわからない不安感や焦りに捕らわれる場合もあります。他にも不眠、疲労感、寝起きが悪い、食欲がないなどがあります。
この季節に、心身がストレスを受けていないかチェックしてみましょう。

こんな人が五月病にかかりやすい
   □何でも完璧にやり遂げたい
   □他人の助けはできるだけ借りたくない
   □ひとつのことにのめりこみやすい
   □趣味をもっていない
   □環境の異なる友人がいない

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2.五月病にならないために

ストレスをためずに環境適応

五月病はストレスを回避できないことが大きな原因です。
上手に気分転換をすることが大切ですが、特にこうでなければならないと決めつけてしまうと、環境適応が難しくなります。
また、ストレス回避といって酒やたばこに頼ることは、他の病気の引き金にもなるので、決してよいことではありません。


1)昔の仲間に会って話をする
人に会って取りとめのない話をすることがストレス回避になります。しかし、新しい環境で知り合った人たちとの会話は逆にストレスになっている可能性があります。
昔の友人などに会って、話をしたほうがよいでしょう。

2)スポーツで気分転換
すべてを忘れて思いっきりスポーツで汗を流すのもお勧めです。会社や学校のことが常に頭の中にあれば、それが症状を長引かせます。
まったく別のことに集中するという意味ではスポーツは非常によいでしょう。しかし、そこでもあまりガンバリ過ぎないことです。力を抜くことを覚えるのも社会では大切なことです。

3)おいしい物を食べる
おいしい物を食べたときには、脳内でドーパミンが出てきます。物事の達成感を感じている時と同じ状況なのです。
だから、時には思いっきり豪華な食事をしてみましょう。

4)8割仕事術を身につける
なんでも完璧にと思う人に五月病が多いのです。気楽に、すべてできなくとも自分の能力の範囲で8割くらいの仕事で納得してみてはいかがでしょうか? これも上手な力の抜き方になります。
なんでも全部できると思ってきたのに、意外に自分の能力の限界を知るかもしれません。しかし、そんな時でも、冷静に自分を観察しましょう。
焦らず、自分の能力を知ることで、仕事をうまくこなせるようになります。

5)専門医に相談する
五月病だからと軽く考えているうちに、中にはうつ病を発症し、見逃されてしまう場合もあります。うつ病の8割は薬で治療できます。症状が長引くなら、やはり精神科、心療内科など専門医にかかってみることです。最近のうつ病治療薬は副作用も少なく、飲みやすいので、自分だけで悩まず、相談してみることです。

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