今回は水廻りを新調する場合を見ていきます。水回りは住まいのなかでも、生活に密着する重要な部分です。ユニット化されていることも多いのですが、サイズを厳密に計算して設計することが重要です。また、水廻りをどのように配置するかが効率的な水の流れを作るうえで大切なこととなってきますから、よく検討しましょう。
また、このシリーズのまとめとして、「自分で設計するということ」の意味を考えたいと思います。
ライフスタイルに合わせて考える
サイズと型を決める
コンパクトな対面式(冷蔵庫がネック) | NYで見かけたコンパクトキッチン(部屋はスタジオタイプ) |
独立型(引戸で仕切る)キッチンはシステム品 | 調理は壁向きだがカウンターが対面式。キッチンは規格品 |
朝食コーナーを持つアイランドキッチン(流しのカウンター隅には洗濯機)IHとガスコンロ2口 | U字型の動線が少ないキッチン |
配置が重要
浴室はユニット化されているので寸法が限られていますが、戸建てで1階に浴室を配置する場合は、在来工法のタイル張りの床で、既成の浴槽をはめ込んで、壁をタイルや浴室用の樹脂パネルで張り、天井は浴室用の樹脂パネルで仕上げます。2階に浴室をもっていく場合はユニットバスが防水の点から良いと思います。段差解消のバリアフリーを考える場合もユニットバスの中では選択できるのでこちらが良いでしょう。
「水廻り」は組合せが難しいところです。欧米のように3点セットで考える場合は洗濯室だけ考えればよく、キッチンに組込みの洗濯機などもあります。いずれにしてもパズルを解くような面白さがあるところです。サイズについては水廻りをコンパクトにすれば、その分居間などを広く取ることが出来ます。5帖くらいが標準です。浴室を広くとると価格は高くなりがちですが、浴室にこだわるメーカーも多くそのバリエーションは豊富です。日本の「お風呂」の豊かさは世界一でしょう。
巾は1間(6尺)だが奥行きを4尺に押えてコンパクト | 右の奥行きを5尺にして少し広く | 柱芯で1間四方の浴室で木造住宅では一般的 |
上の標準に同じ | 浴槽は膝を曲げて入りますが、洗い場はゆったり | 浴室は内法で1坪あり、ゆったりできる |
無償で入手できるものも
CADには平面図を書くと簡単なものから、立体図(3D)を作成するものまでさまざまな種類があります。かつてと比べて設定や操作がわかりやすくなっていますので、プロにお願いする前に自分である程度検討してることがお勧めです。価格も市販ソフトで「3Dマイホームデザイナー」は1万円ほどからあります。また、「せっけい倶楽部」や、2次元の製図ソフト「JW_CAD」など、フリーソフトも出ています。これらは建築に限らず設計者も多くの人が使っています。日影の図面なども描けるので、2.5次元CADとも言われています。
【せっけい倶楽部】 http://www.e-house.co.jp/plan/cad/
3Dの間取りCAD(フリーソフト)。サンプルの平面図も400以上揃っていて、これらを敷地にあわせて変形して使うのが使いやすいでしょう。ソフトをダウンロードする時は最小版とフルサイズ版があり、間取りは両者変わりありませんが、外観図(パース)の出力で下記のように違いが出ます。
1階平面図 | 2階平面図 | 1階鳥瞰図 |
■最小版とフルサイズ版の違い
最小版 | フルサイズ版 |
※せっけい倶楽部のサンプルデータより。
【JW_CAD】 http://www.jwcad.net/ 2.5Dのプロ用CAD(フリーソフト)。このソフトはフリーソフトながらプロ用の機能を備えています。データ拡張子はJWWやJWCとなっていますが汎用のCADの「オートCAD」のデータ形式のDXFやDWGへの変換が出来ます。 意匠(いわゆる建築)、構造や設備のそれぞれがちがうCADを使っていてもDXFやDWGに変換して読み込んだり、書き込んだりして共通のデータを生かして設計効率を上げることができます。他の2つは3Dではありますが、データ変換は出来ません。 便器や窓(サッシ)キッチンなどの部品もJW用に揃っているので、メーカーのホームページからダウンロードして図面に貼り付けて使います。 |
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各種の解説本が出ている | ||
【3Dマイホームデザイナー】 http://www.megasoft.co.jp/3dmyhome12/
3Dの間取りCAD(有償ソフト)。市販ソフトのメリットはキッチンや浴室、洗面などやドアなどがメーカーの規格で部品化されているところです。インターネットでデータセンターと繋いで最新の部品を参照できますが、入会費などの費用が必要です。また、サンプルの平面図もたくさん揃っているので参考にすると良いでしょう。部品に関しては細かい寸法を気にせずデザインで選んで、置いてみるという感じです。収まらなければ選びなおすという風に進められます。雰囲気は分かるのですが、最終的にはショールームやカタログで確認してください。
1階平面図 | 2階平面図 | 外観パース |
※3Dマイホームデザイナーのサンプルプランより。
入念なチェックが必要
プランはできあがったわけですが、それを実際に建築することは可能でしょうか?それには幾つかの関門を通らなければ実現できません。素人にはハードルが高いので、設計事務所や工務店に相談して補佐してもらうのが良いでしょう。
〇構造チェック
建物が住む人の重さに耐えられるか、強い地震や風で壊れないかチェックします。
〇法規チェック
建築基準法や消防法、地方自治体による建築条例などに適合しているかチェックします。
法律的には
延べ床面積100�(約30坪)までという制限はありますが、自分の家の場合は無資格者でも設計はできることになっています。確認申請書の上では設計者として名前を書くことができます。申請業務は建築士(木造建築士、二級建築士、一級建築士)に頼むのが良いでしょう。その場合建築士は(設計者の)代理者という肩書きで出来上がった平面図をもとに構造計算、換気給排水の図面など補足して申請手続きを進めます。
起こりうる問題と対応
地震の時に建物が浮き上がらないように土台と柱を繋ぐ金物などが見当たらないなど、建築基準法が改正される前の基準で設計していることが多いようです。ですから、屋根まであるいは外壁まで専門家(工務店など)に依頼して作ってもらい、更に電気、水道、ガスの配線・配管も作ってもらうハーフビルドの方式が良いでしょう。なお、電気などの工事は資格が必要で、電力会社に手続きが必要です。同じく、給水、排水も新たに作るときは手続きが必要になります。
設計することを楽しむ
模型を作ったり、3Dソフトでパースを書いたりすることは、細かい作業が多いので根気が必要ですが、住まいづくりに積極的に参加することができ、形が見えてくると楽しみも増えてきます。家族の気持ちがを一つひとつ積み上げていくその過程を楽しんでみてはいかがでしょうか。