前回で住宅のチェックポイントは大まかに理解していただけたかと思いますが、いまの住まいの問題点は発見できたで しょうか。いよいよ具体的に改築や新築の計画を進めるには、チェックリストを使うとわかりやすくなりますし、改善点が見え てきます。現状で不満な箇所は改善し、満足しているところは残すというように考えていくと、漠然としていた「新築の家」も 具体的な姿が見えてきます。
■表1 住まいの広さと仕様
項目 | 改善策 | |
気に入らないところ | ||
収納が少ない | □捨てて良い物で溢れていないか □必要で使いやすい所に収納場所があるか □納戸があれば和ダンス等のスペースが空く |
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部屋の風通しが悪い | □空調に頼る(換気扇とエアコン) □角部屋にして、壁2面に窓をつける □ドアに喚起ガラリ(とびら)を付ける |
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窓を開けると隣の部屋が見える | □窓ガラスが透明のときは曇りフィルムを付ける □窓の外に目隠しルーバー(羽板)を付ける □カーテンにブラインドを付ける)(明るさは犠牲に) |
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動線が悪くて家事の効率が低い | □洗濯機と物干し、肌着の収納場所を考える(脱衣と洗 濯機は近くで、その廻りに肌着が収納できれば理想的) □キッチンは冷蔵庫>流し>調理スペース>加熱機(コンロ・オーブン・レンジなど)>配膳台(食卓)で近くに食器棚というように設置し、作業の流れができるようにする □冷蔵庫の扉の開き方は流しの位置と合わせる(メーカ ーによってはどちらにも開く冷蔵庫もある) |
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気に入っているところ | ||
居間の日当たりが良い(ただし、夏 は暑い) | - | |
風通しが良い(角部屋だから 2 カ所 窓がある) | - | |
2 階からの見晴らしがよい | - |
設計者のタイプには 2 通りあります。外観から決めていくタイプと間取りから決めていくタイプです。別の言い方をすると、 前者はデザイン重視型、後者は機能重視型です。偏りすぎると「カッコウ良いけど住みにくい」、「住みやすいけど不恰好」と いうことになりますが、その選択は住み手が決めるものです。最終的にバランスが取れて納まればベストです。
とは言え、「住みにくい」という原因には「使いこなせていない」ということもありますので、設計者には事前にその趣旨をよく 理解しておきましょう。出来上がってしまってからでは、後の祭りですから。後の祭りにならないようにするためにも、自分で 間取りを考えてみるのは良いことです。その場合、基本方針(コンセプト)を立てて軸がぶれないようにすることが大事です。
それでも、必ず矛盾は起きます。何を優先して、何を妥協するのか、ある程度想定しておきましょう。
◆矛盾例1 日当たり vs 夏の暑さ
エコな家で居間の日当たりを良くして、気分が良い部屋にしようと思ったが、夏は暑さを避けられない。その時は 出来る限り断熱をしてエアコンに頼るしかない。◆矛盾例2 安全ルート vs 侵入ルート
防災を考えて、避難ルートを確保すると、それが泥棒の侵入ルートになることも・・・。考え方が固まってきたら実際のプランニングに移ります。その方法は幾つかあります。
【方法1】 方眼紙を使って描く
方眼紙は 1mm 毎に細い線、1cm 毎に太い線で書かれているので 1cmx2cm を畳1枚分として考えて書きます(図1)。 0.91cmx1.82cm ですと正確な 50 分の1の図面になりますが、少し大きめになります。正確に描くには、コピー機で 91%に 縮小すれは良いでしょう。
方眼紙の場合は、消しゴムで修正しながら完成へと近づけていきますが、部屋毎の大きさ、例えば 6 畳、8 畳、10 畳、12 畳 などを作って、組み合わせていくのも良いかもしれません(図 2・3)。
■図1 |
■図2 |
■図3 |
2cmが 90cmとする(約 1/50)。 |
6 帖から 12 帖などの部屋の輪郭を書く。 |
キッチンや浴室、洗面など。 |
【方法2】 方眼紙を使って描く
部屋毎の大きさを作って組み合わせる場合には、厚紙やダンボールに糊で貼っておくと組み合わせやすくなります(図4〜9)。部屋の中に置く椅子や収納なども切り抜いた紙を作ってレイアウトすると色々な置き方を検討できます。
■図4 |
■図5 |
■図6 |
部屋の輪郭の紙を糊で貼る。 |
部屋の輪郭で切り取る。 |
先ず1階からダンボールの台紙に仮止めしていく。 |
■図7 |
■図8 |
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2階部分はA4のクリアホルダーに貼っていく。 |
1階と重ねて見られるので分かりやすい(壁なども1階と同じ位置に配置できる)。 |
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■図9 |
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1、2階完成(縮尺は1/50)。 |
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【方法3】立体化する
平面のままでももちろん構いませんが、立体化すると、さらに現実味が帯びてきます(図10〜16)。
■図10 |
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ダンボールを6cm巾(3m高さになる)で切り、適当な長さ2cmか3.5cmで幾つか作り1階の部屋の脇にボンド糊で立てる。 |
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■図11 |
■図12 |
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2階は表からセロファンテープでバラバラにならないように固定して透明の台紙から外しす。1階と同じく壁を適当に立てて、裏返してダンボールをもう1枚貼り補強します。 |
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■図13 |
■図14 |
1階の上に重ねて、糊付けする。糊付けすると結構頑丈な感じになってきます。特に角の直角の壁は強度が実感できます。実際の建物も壁に筋交いを入れたり構造用のベニヤで壁を作って地震や風の力に耐えられるようにしていくわけです。 |
次は屋根を乗せてみましょう。一般的な3寸勾配で作りますが、好みで5寸勾配にきつくしても。2寸5分より緩いものは屋根材が金属葺き等に限られてきます。3寸勾配は水平に10行って、3上がる勾配です。 |
■図15 |
■図16 |
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妻側に3寸勾配の3角形(破風)を付けます。平面図では無かったバルコニーなども付けてみましょう。 |
完成! 人物や車などの点景を添えるとよりスケール感が増します。 |
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作成者より一言
模型はちゃんとした材料でなくとも在り合わせの材料(今回はビールのダンボールケース)でも出来ます。作ってみると 結構のめり込むもので家事をしながら1日で上げるつもりが2日以上掛かりました。昔から「色気」と「大工っ気」 人間、 誰でも持っていると言われています。次回はキッチンやみ洗面所などの仕組みと設計をみてみます。