今回は建物の外の空間について考えてみます。専門用語では「外構」と言います。庭や塀、門などのことですが、これらは住まいでもビルでも、外の世界と内とを結ぶ重要な場所です。つまり、建築物は外構と合わさって1つの作品となるのです。
住まいは住んでいる人の人柄が現れると言いますが、庭についても同じです。その庭について今回から2回に分けて考えてみます。
とかく忙しい現代人にとってリラックスできる空間は大切です。
緑で気持ちを豊かに
庭は緑による癒し効果が大きい空間です、それに加えて、デザインする楽しさや、小さいながらも自分の自然空間(ビオトーブ)を作り出す喜びを味わえます。
実利も望める
果樹や野菜などを植えて収穫できれば、育てる楽しみとともに実利が望めます。無農薬野菜などにチャレンジして自分のこだわりを活かした食事をつくることもできます。
デザインの基礎知識
まずは東洋的なデザインにするか、西洋的なデザインにするかを決定しておくと、細部のデザインも楽になります。
■東洋的デザイン
自然に近い状態を再現する考え方です。西洋ではイギリスなども一部この考え方があります。我が国では、盆栽などがこの極地といえます。
■西洋的デザイン
作為的に自然を淘汰して作る考え方です。整然と並んだ木々、放射状の道路(舗装)などがあります。
日本古来の手法を活かす
日本古来の伝統的な手法も、少し手を加えると、現代の住まいでも生きてきます。西洋的デザインに取り入れても面白いものです。
◆縁側
ウッドデッキとして屋外空間と室内をつなげてみるとよいでしょう。
◆踏み石
庭の要素は緑のほかに踏み石などを組み合わせると雰囲気がかわってきます。アレンジとしては砂利石やレンガ、テーブルを使ってみてもよいでしょう。
◆地窓(雪見障子)
隣家の余計な背景を遮って、庭の低い位置のみを綺麗に見せることができます。雪見障子や地窓の無い住まいでは、ロールスクリーンやベネチアンブラインドなどでも代用できます。
植物の基礎知識
植物の種類によって、土や肥料、環境などを選ぶ必要があります。
■土
土は植物により好みがあるが、基本は適度な水はけと空隙が確保され、栄養分があることです。
■肥料
種 類 | 特 徴 | |
化学肥料 | 化学的に合成された肥料で、有機肥料に対し無機肥料という。 | |
有機肥料 | 堆肥 | 植物系残渣を自然に堆積発酵させたものが主流だが、鶏糞などもこれに含まれる。水持ちがよい。 |
腐植土 | 堆肥は完全に分解されているが、腐植土(腐葉土)はその名のとおり腐敗しているが、葉の形状をしている。不快感を持つような匂いはない。 | |
油粕 (あぶらかす) |
アブラナなどの農作物から油を搾りとったカス。肥料としての効果はゆっくりなので、植え込む1週間前には土に混ぜておく。匂いは腐植土、堆肥に比べて強い。 |
■水
水分は植物にとって不可欠ですが、夏場の炎天下で水遣りをすると、温度が上がり悪影響になることもあるので注意が必要です。水遣りは、夏は夕方、冬は太陽が昇ってからが基本です。
■光
ほとんどの植物は直射日光を好みますが、日当たりの悪いところでも育つものも多いです。
■温度
地域により育つものと、そうでないものがありますが、その地域で入手できるものは特別な観葉植物でない限り、地植えで大丈夫です。
■風通し
風の通らないところは虫がつきやすいので注意が必要です。
緑のボリューム
高さや緑の葉の分量のバランスが重要です。高さについては、基本は奥が高く、手前に来るにしたがって低くしていきます。奥行がないときには、高くて葉張の少ない木(例えばヒメシャラ等)を配置して、その足元に灌木や下草を植えるとよいでしょう。
目線
室内から見たときと、庭に立ったときの見え方のバランスを考えます。
ペーブメント(舗装)
ペーブメントでイメージを変える
ペーブメントを作ると庭のイメージがずいぶん変わります。全体のバランスを考慮して材料を選びましょう。
◆砂利敷き
砂利を敷いた後は雑草などが生えてくるので、防草シートを敷いてから砂利を敷くと良いでしょう。
◆敷石
タイルよりは厚さがあるので、直接土の上に敷くこともできます。自然石(自然形状)や四角形などに整形されたものがあります。30�各のコンクリート平板などもあります。
◆レンガ
赤レンガが一般的ですが、白っぽい耐火煉瓦や古レンガなどもあります。直接、土の上に置いてもよいでしょうし、モルタルで固定する方法もあります。
◆インターロッキングブロック・緑化ブロック
◆タイル
種類が豊富にあります。コンクリートを打ってその上にモルタルで固定するのが一般的です。変わったところでは瓦などもあります。
◆枕木
木であるけれども、外で長く使えます。柵として縦に使ったり、敷石の代わりに敷くこともできます。
◆パーク
木の樹皮で、赤茶色で軽くて扱いやすいです。木の幹を粉砕したものがウッドチップと言われるもので、灰色をしています。枯葉が落ちるところでは掃除が大変なので避けた方が良いでしょう。
土間
床は地面より上がった面ですが、地面の延長で屋根のある空間を土間といいます。民家の土間は三和土(タタキと読む。土と消石灰とニガリ(塩化カルシウム)を混ぜたもの)が使われていますが、現在はコンクリートやタイルなども使えます。コンクリートでは味気がないので、セメントと土を混ぜ合わせたアースセメントは少し茶色になっていて、ガーデニングにも使えます。
塀や壁画
建物の壁面や塀はガーデニングの大きな要素です。場合によっては、これらの上に木製のスノコ上のラチスなどを置いたりはったりすると、雰囲気が変わり緑との調和もとれます。
縁側(ウッドデッキ)
縁側やウッドデッキを作ることにより室内と庭のつながりができ、屋外空間をより歌化に使うことができます。
水
池や小川は緑とともにガーデニングの重要な要素ですが、一般の家ではなかなか難しいことが多いようです。散水栓の配置を工夫すれば水をガーデニングに取り入れることができます。あるいは、水瓶や水盤などを配置して水生植物を楽しむこともできます。蚊対策にはメダカを飼うことをお勧めします。
◆実例◆
【狭い庭】わずかな土でも植物は育ちます。わが国の家屋は小さくて25坪ほどくらいから、と言われていますが、最近の建売では15坪の土地に3階建などのものもあります。そんな所でも、ガーデニングは可能です。盆栽などを置いて、狭小の空間を活かす工夫をしてみましょう。
【一般的な庭】
住宅の敷地面積が35坪とします。そこに20坪くらいの2階建ての家屋がたっていると、残りのスペースは15坪ほどになります。さらに北側の部分やエアコン設置スペースを除くと10坪程度が庭になります。
【ゆとりがある庭】
ゆとりがある庭は手入れも大変ですが、できるだけ手間を省くには、雑草が生えないように砂利敷きにしたり、レンガなどで舗装するとよいでしょう。
植物を選ぶときには庭との調和だけでなく、庭への適性も考慮に入れて選びましょう。
樹木を選ぶとき
■苗木から
購入した苗木は、葉の向きをよく見ると南面がどちらであったかわかるので、その方角を南側に植えます。ただし、樹形が良いほうを室内側に向けると、その向きが反対になりやすいので、育つ過程で剪定をしながら形を整えていきます。
植えつけた後は風で揺れないように支柱を付けると、根が伸びたときに切れません。苗木は麻のコモでまかれていることが多いのですが、縄を何か所か切る程度で、そのまま植えつけて構いません。
■挿し木、種から
バラやブルーベリー等は挿し木で増やすことができます。乾燥しないように赤玉土などの保水性の良い土に挿し、水遣りをします。直射日光を避けあまり風があたらないところが良いでしょう。
草花や野菜などを選ぶとき
■苗から
苗は、トマトやキュウリなど接ぎ木をしてあるものもあります。種から蒔くのとは違って実がなる確率が高いので、野菜にはお勧めです。
黒いビニールのポットで植えられているものは、周りの巻き付いている根を裁いてから植えつけます。そうすると地面の土に根が伸びて成長が早くなります。
■種から
朝顔、日日草などの花や小松菜、20日大根などの野菜が種から育てるものの代表です。種を蒔くとたくさんの芽が出てくるので、本葉が出たあたりで、間引きます。それを2回ほど行って、適当な間隔に育てていきます。野菜の間引いたものは摘み菜として食べられます。