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相続を考える②

「相続を考える①」では、相続の基礎を掲載しました。今回は、相続税対策について取り上げます。平成27年1月に税制が改正になり、基礎控除額が6割に下がりました。このことは相続税の対象者が拡大したことと、相続税額が増大したことを意味します。財産をもらい受けても、税金に苦しむようでは、意味がありません。税金に対しては少しでも賢く対応したいものです。また、財産を残す人も、遺族のためにできるだけ税金の問題は残したくないものです。

納税者だけの対策だけでは不十分

相続税を支払うのはもちろん、財産をもらい受けた相続人です。しかし、相続は予期しない形で起こることもあります。家族が亡くなった混乱で冷静に頭を整理できないこともあるでしょう。また、相続税はどのような形で残すかによって額が変わってくることもあります。ですから、被相続人となる人は、元気なうちに残す財産と相続税がどれくらいになるかを把握したうえで、できるだけ相続人の負担が少なくなるよう、ある程度対策を講じることが遺族に対する心遣いになります。
1.	遺産がいくらあれば税金の対象になるか

相続の対象となる財産

相続財産は、現金や土地・家屋だけでなく、預貯金や有価証券、宝石、貸付金、著作権など、金額に換算できるものはすべて相続税の対象となります。
また、あまり認識されていないのが、死亡退職金や生命保険の死亡保険金(被相続人が保険料を支払っていた場合)です。これらは、被相続人の財産ではないけれども「みなし財産」として相続税の対象となります。
さらに、相続人が被相続人から死亡する3年以内に贈与された財産は、贈与額が相続財産の額に加算されて相続税の対象となります※1。令和6年1月1日からは、3年を超えて7年以内の贈与については、総額100万円までは相続税の対象になりません。また、相続時精算課税※2を選択したい場合も、贈与額が相続財産の額に加算されて相続税の対象となります。なお、令和6年1月1日以降に相続時精算課税を選択した場合、年110万円までは相続税も贈与税もかかりません。
相続税の対象となる財産
  • 被相続人の死亡によって譲りうけた財産(現金、土地、家屋、有価証券、宝石、貸付金、著作権など)
  • みなし財産(死亡退職金、死亡保険金)
  • 死亡する3年以内に贈与された財産
  • 相続時精算課税の適用を受けた財産

※1 すでに納付した贈与税額は相続税から差し引かれる。
※2 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に選択できる制度。2,500万円の特別控除がある。すでに納付した贈与税額は相続税から差し引かれる。

相続税の対象とならない財産

一般的に、日常的に礼拝をしている物や宗教や公共事業を目的として使用する物などは相続税の対象になりません。たとえば、墓地や墓石、仏壇などには相続税はかかりません。また、自治体で運営する心身障害者共済制度から支給される年金や弔慰金も相続税の対象にはなりません。
なお、本来相続税の対象となる財産であっても、基礎控除額より低い額であった場合、相続税はかかりません。
相続税の対象とならない財産
  • 日常的に礼拝をしている物(墓地や墓石、仏壇など)
  • 宗教や公共事業を目的として使用する物
  • 自治体の心身障害者共済制度から支給される年金・弔慰金
  • 非課税限度額より低い額の死亡退職金や死亡保険金

遺産がいくらあれば相続税がかかるか

【通常の財産の場合】

一番気になるのは、どれくらいの遺産があれば、どれくらいの相続税がかかるのか、ということでしょう。
基礎控除額より低ければ、相続税はかかりませんから、まず基礎控除額を分岐点に考えてみましょう。基礎控除額は次のように計算されます

例えば、1億円の財産を被相続人の妻と2人の子が相続したとしましょう。法定相続人は3人ですから、3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となり、単純計算すると5,200万円分の財産に相続税がかかります。実際の計算方法については「相続を考える①」を参照してください。
具体的にどれくらいの相続税がかかるか、次の早見表を目安に考えるとよいでしょう。

表 相続税早見表 (相続税総額)
基礎控除前の
遺産総額
相続人の状況
配偶者※
のみ
配偶者※
+子1人
配偶者※
+子2人
子のみ1人
3,000万円 0円 0円 0円 0円
4,000万円 0円 0円 0円 40万円
5,000万円 0円 40万円 10万円 160万円
1億円 0円 385万円 315万円 1,220万円
2億円 0円 1,670万円 1,350万円 4,860万円
3億円 0円 3,460万円 2,860万円 9,180万円
※配偶者の場合、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか高いほうの額までは相続税はかからない。
◆法定相続人以外の人が財産をもらい受けた場合は?

通常、遺言書がなければ、自動的に法定相続人が定められた配分で財産を相続しますが、被相続人は遺言書で法定相続人以外の人に財産を譲る(遺贈)人を指定することもできます。遺贈によって法定相続人以外の人が財産をもらい受けた場合でも相続税がかかります。ただし、基礎控除額の計算には人数として含めません。また、相続人が配偶者または直系血族以外の場合、相続税は2割増しになります。

【死亡退職金や死亡保険金の場合】

死亡退職金や死亡保険金といったみなし財産の場合は、非課税限度が次のように設定されています。

たとえば、生命保険の3,000万円の死亡保険金の受取人が「妻」であるとき、法定相続人は1人なので500万円までは非課税なので2,500万円を相続財産に合算します。

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2.財産を残す人の心遣い?

相続税は妻や子どもが支払うことをお忘れなく

自分が死んでも、残された家族には生活の心配がないように十分な財産を残したい。そう考える人は多くても、相続税のことまで計算している人はどれくらいいるでしょうか。財産を残すことに安心できても、相続税を負担しなければならないのは、財産を受けたあなたの家族であることを認識しておきましょう。
特に、現金や現金化しやすい財産は良いとしても、土地や宝石などなかなか換金しづらいものを取得し名目上は数億円の資産を保有していても、相続税を払う現金が手元にない、そのために借金をするということもあります。あなたが亡き後に、相続税が重荷になる人が出ないか、考慮しておくことも被相続人の役割でしょう。財産の額だけではなく、それに伴う相続税の額も同時に把握しておくことが残される家族の安心につながります。

どんな形で財産を残すか

残された家族のことを思うとき、どんな形で財産を残そうと思いますか? 生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和4年度)によると、「生命保険」と回答した人が約62%とトップで、「預貯金」が約40%で続きます。
預貯金の割合が2番目に高いのは簡単に現金を引き出せるイメージがあるため、「備え」として安心感があるのでしょうか。しかし、相続を前提とした場合、それは全く当てはまりません。つまり、預貯金は出し入れがある分、自分が死亡したときに残高がどれくらいになっているかということは予測がつきません。不測の事態でその前に全額近く引き出しているかもしれません。何よりも、一番の問題は名義人が死亡すると、その口座はすぐに凍結され、相続の手続きが終了するまで誰も引き出すことができなくなることです(相続の公平性を保つためです)。

生命保険を上手に活用する

そこで考えたいのが、生命保険です。生命保険は契約時に「死亡保険金は○○万円」と決めてありますから、必ず一定の額が家族に渡ることがわかっています。しかも預貯金のように口座が凍結されるということなく、通常2週間前後で支払われます。また、相続人を指定していない財産の場合、相続人間のトラブルを招きがちですが、死亡保険金は受取人固有の財産ですから、トラブルを避けることができます。土地は全て長男に、替わりに死亡保険金は次男にといったことを事前に決めておけば、被相続人も相続人も安心です。
また、死亡保険金は<500万円×法定相続人>の非課税限度枠がありますから、相続税対策にも有効です。
相続における生命保険にメリット
  • 決まった額の現金が早いうちに受け取れる。
  • 死亡保険金は受取人固有の財産であるため、トラブルの元になりにくい。
  • 非課税限度額を有効活用すれば相続税対策になる。

◆死亡保険金は契約の仕方で税金が決まる

生命保険の死亡保険金を受け取った人は税金を支払わなければなりません。この税金は契約の仕方によって相続税、所得税・住民税、贈与税とことなっています。一般的には相続税の税率が最も低く贈与税が最も高くなります。

契約者 被保険者 受取人 税金
Aさん Aさん Bさん 相続税
Aさん Bさん Aさん 所得税・住民税
Aさん Bさん Cさん 贈与税

⇒たとえばAさんが自分の死亡時に妻が保険金を受け取れるようにするパターンは、相続税の対象となります。

贈与と相続とどちらを選ぶか

相続は被相続人の死亡によって成立しますが、贈与は生前に財産を受け渡すことをいいます。贈与を行うと、財産を受け取った人は贈与税を支払います。贈与税には基礎控除額110万円(年間)があり、税率は「18歳以上の子や孫などへの贈与(特例贈与)」と「それ以外の贈与(一般贈与)」で区分が分かれています(下表)。なお、死亡から3年前までの贈与財産は、その額を相続財産の額に加算して相続税を計算します(すでに納付した贈与税額は相続税額から差し引かれます)。

表 贈与税
<一般贈与財産> 一般税率
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
200万円超300万円以下 15% 10万円
300万円超400万円以下 20% 25万円
400万円超600万円以下 30% 65万円
600万円超1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
<特例贈与財産> 特別税率
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% -
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

相続税と贈与税では計算方法が異なりますので、一概にどちらが有利かということはいえません。ご自分の財産が現在どれくらいあって、誰にどれくらい譲るか、相続税はどれくらいになるか、贈与税だったらどれくらいになるか、そういったことをシミュレーションしてみることが、被相続人となる人の責任であり心遣いでしょう。
なお、相続よりももっと積極的な形で子どもや孫を支援したいという人は、一般の贈与よりも高額の贈与に対する税金が有利になる特例贈与、あるいは「相続時精算課税制度」を検討してみてもよいでしょう。

◆相続時精算課税制度は高額贈与に有利

「相続時精算課税制度」とは60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与として選択できる制度です。令和6年1月1日からは、基礎控除110万円までは相続税も贈与税もかかりません。また、特別控除の2,500万円までは贈与税がかかりません。2,500万円を超えた額には20%の贈与税がかかります。贈与した人が死亡し、相続があった場合には、贈与財産と相続財産の合計額から相続税を算出しますが、このときすでに支払った贈与税は相続税から控除(精算)します。
相続時精算課税制度では特別控除の額が2,500万円と大きいため、子や孫への高額の贈与に有利といわれています。ただし、いったん相続時精算課税を選択すると通常の贈与税に切り替えることはできませんから、税額を試算したうえで選択するとよいでしょう。

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3.財産を受ける人の対策

税額軽減制度や控除を利用する

配偶者の軽減

配偶者が夫の財産を相続したときには、税額が軽減されます。配偶者が取得した額が、①1億6,000万円 ②配偶者の法定相続分相当額 のいずれか高い金額を超えるまでは相続税がかかりません。 この制度を利用するためには手続きが必要です。税額軽減の明細を記載した相続税の申告書等に戸籍謄本、遺言書の写し、遺産分割協議書等、必要書類を添えて申請します。

控除

相続税を計算する際には、控除できる経費があります。また、各人の納税額を決める際に、納税者の特徴により控除できる項目があります。

相続税の計算で控除できるもの
  • 検死や遺体の運搬にかかった費用
  • 遺体や遺骨の回送にかかった費用
  • 火葬、埋葬、納骨を行うためにかかった費用
  • お通夜や葬式前後に生じた、通常葬式に欠かせないと認められる費用
  • 葬式で寺などに支払った読経料など
相続税の計算で控除できないもの
  • 香典返しにかかった費用
  • 墓石・墓地の購入や借入にかかった費用
  • 初七日や法事などにかかった費用

納税の際の控除
  • 暦年課税分の増税税額控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除(二次相続時など)
  • 外国税額控除

一緒に住めば減税になる?〜小規模宅地等の特例〜

亡くなる直前まで被相続人が事業に使っていた土地または住んでいた土地について、どういう利用状況にあったか、誰が相続したかといった一定の要件に従って、相続税の計算のための評価額が大幅に減額されることを、「小規模宅地等の特例」といいます。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度
面積
減額される割合
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等※1に該当 400� 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その夫人の事業用の宅地 特定同族会社事業用宅地等※2に該当 400� 80%
貸付事業用宅地等※3に該当する宅地等 200� 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等※3に該当する宅地等 200� 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等※3に該当する宅地等 200� 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等※4に該当する宅地等 330� 80%
※1 特定事業用宅地等 :
被相続人が事業を行っていた土地を同居親族が所有し自業を引き継いでいる。
※2 特定同族会社事業用 :
被相続人が法人の事業に使用していた土地を親族が所有し役員として事業に携わっている。
※3 貸付事業用宅地等 :
被相続人が貸付事業に使用していた土地を同居親族が所有し事業を引き継いでいる。
※4 特定居住用宅地等 :
被保険者の土地に二世帯住宅として居住していた親族や、被相続人が施設に入居している場合で、その土地に住んでいた親族が土地を相続した。
小規模宅地等の特例のポイント

被相続人の土地を相続したのが

  • 配偶者の場合:無条件で減額の適用を受けられる。また、配偶者には自宅に居住し続ける権利が保障される。
  • 同居親族の場合:継続して居住した場合(少なくても申告期限まで)のみ適用を受けられる。
  • それ以外の親族の場合:被相続人に配偶者も同居親族もなく、相続人が持ち家を持っていない場合、所有を継続すれば(少なくても申告期限まで)適用を受けられる。
  • 不動産を相続した場合、相続人は相続登記する必要がある。

<例>
・Aさんの場合…自身は賃貸マンションに住み、親の土地を相続することになった⇒適用される
・Bさんの場合…自身は分譲マンションに住み、親の土地を相続することになった⇒適用されない

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