「損害保険」というと、確かに必要だけれども、生命保険ほどではないと思っている人も多いのではないでしょうか。
生命保険は「対人」ということから、「対物」の損害保険より差し迫ったものを感じられるのかもしれませんが、どちらも何かあったときに加入者を経済的損失から守るということでは同じ目的を持っています。
すでに加入している人も加入していない人も、ここで損害保険の意義を再確認してみましょう。
ファイナンシャルプランナー 星野 諒
損害保険ってどんなもの?
損害保険は、損害保険会社が取り扱う保険の総称で「損保」などとも呼ばれています。自然災害や自動車などの乗り物の衝突事故などによって生じた損害を補償するのが目的で、保険会社が予想する損害率に応じて保険料が定められています。損害保険の種類
大きく分けると身近な自動車保険や火災保険などのノンマリン(非海上)分野と、船舶保険や運送・貨物保険(海・陸・空)などのマリン(海上)分野とがあります。この分類は、そもそも「保険」の起源が海上保険にあることに由来します。陸上貿易や輸送が発達するにつれ、ノンマリン分野が創設されましたが、マリン分野はノンマリンの保障対象や保障規模が大きく異なることから現在でもこの体系となっています。
ノンマリンは主に個人対象、マリンは主に船舶等の所有者や法人が対象となります。ここでは、主に個人対象となるノンマリン分野について記載します。
制度的にみると、日本では「保険業法」に基づき、金融庁による監督のもと個人から法人まで多くを契約対象にして販売されているものがほとんどです。火災共済など、保険業法以外に根拠法のある損害保険もあります。
■マリン分野の損害保険
海上保険(船舶・運送・貨物)※運送には船舶以外の航空・陸上の運送も含まれます(損保会社によってはノンマリンの扱いにしているところもあります)。
■ノンマリン分野の損害保険
損害保険 | 内容 |
自動車保険 (強制・任意) |
自動車事故の際の運転者・同乗者、被害者の人的損害、物的損害、車両損害を補償します。 そのなかでも加害者として被害者に対して賠償金を支払うものを「賠償責任保険」といいます。 |
火災保険、 地震保険 |
火災や地震などの災害による建物や家財の損害を補償します。 |
傷害保険 | 事故(交通事故、旅行途上、レジャー時など)によるけが・病気・死亡による損害を補償します。 |
その他 | 旅行中のけがや盗難など総合的に保障する「(海外・国内)旅行保険」や、ゴルフプレー中のけが、盗難、ご祝儀に備える「ゴルファー保険」などがあります。 |
※損害保険のなかでも傷害保険などには、積立形式や財形形式のものもあります。
自動車保険の主な補償
自動車保険では、主に下表の保障を組み合わせて契約されます。また、商品によってさまざまな特約がありますから、ニーズに応じて組み合わせることができます。■主な補償
補償 | 内容 |
対人賠償 | 他人にケガを負わせてしまった場合の補償 |
対物賠償 | 他人の物を壊してしまった場合の補償 |
人身傷害補償 | 自分と家族などがけがをしてしまった場合の補償 |
車両補償 | 自分の車を壊してしまった場合の補償 | 費用の保障 | 相手が交渉に応じてくれない場合の弁護士費用や事故時の帰宅費用や宿泊費用など |
【特約】
|
自動車を運行させるということはさまざまなリスクを伴います。
万が一事故を起こしてしまった場合の賠償では経済的な負担を負うことになります。
そしてこの経済的な負担は時には莫大な金額になることもあります。
そこで、「保険」という経済的リスクを回避するしくみを利用することで、安心で快適なカーライフを送ることができるのです。
自動車事故で生じる責任
自動車の交通事故で他人を傷つけてしまった場合、次のような責任が発生します。- 1 刑事責任・・刑事罰を受ける
- 2 民事責任・・相手に与えた損害を賠償する
- 3 行政責任・・行政処分を受ける
自動車保険は、自動車損害賠償補償法(自賠法)により保険契約の加入が強制されている「自賠責保険(強制保険)」と、加入が個人の自由に任されている「任意保険」に分かれています。
自賠責保険(強制保険)
自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)は先の自賠法に基づいて、自動車の交通事故による人身事故の被害者を救済する目的で、1台1台すべての自動車に対し、契約を義務付けている強制保険です。これは事故を起こして加害者となった場合でも、賠償責任を全うできるようにするためのものです。
■対象となる事故
自動車事故のなかでも人を死傷さてしまった人身事故のみで、物損事故や自損事故は対象になりません。■保険限度額
支払われる保険金額の上限が法律で定められています。- ○死亡による損害・・3,000万円
- ○障害による損害・・120万円
- ○後遺障害による損害・・後遺障害の等級に応じて75万円〜4,000万円
■示談交渉
自賠責保険の場合は保険会社が加害者に代わって示談交渉をする示談交渉制度はありまあせんので、自分で示談交渉を行う必要があります。任意保険
人身事故では自賠責保険の上限額3,000万円を大幅に上回る2〜3億円の賠償額が認定される場合もあり、自賠責保険だけでは補償しきれなくなっているのが現実です。また、自賠責保険は他人の死傷に対する保障であるので、物を壊してしまった物損事故や自分自身のけがや、自分の自動車やバイクなどの損害、自損事故に対する保険金は支払われません。そのような場合に幅広くカバーをしてくれるのが任意保険となります。
現在、損害保険会社は自賠責保険料は法律に基づいて一律ですが、任意保険商品においてはさまざまな保障やサービスがあり、保険料の設定も損害保険会社により異なります。
■補償されるもの
※損害保険会社により取扱いが異なります。【被害者に対して】
○対人賠償(被害者を死傷させてしまった場合の治療費や慰謝料)
○物的賠償(被害者の車などを破損させてしまった場合の修理費)
【自分や同乗者に対して】
○人身傷害(治療費や仕事を休む場合の生活費)
○車両保険(自分の車の治療費や盗難被害額)
【その他】
○もらい事故の場合の弁護士費用など
■保険料
保険料の設定は損害保険会社により異なりますが、運転者の事情によりさまざまな便宜が図られた商品があります。【例】
- ○走行距離によって定める ⇒ 年間予測走行距離が短い人ほど、保険料が安くなる。
- ○運転頻度によって定める ⇒ 休日だけのドライバーは保険料が安くなる。
- ○免許証の種類によって定める ⇒ ゴールド免許ならば保険料が安くなる。
- ○車を借りて運転する場合 ⇒ 1年間などの短期契約に対して保険料を支払う。
次回は、「火災保険と地震保険」を掲載します。