今回で「生命保険を考える」は最後となります。
これまでの内容を振り返り、Q&Aでさまざまな疑問にお答えします。
ファイナンシャルプランナー 星野 諒
Q1 生命保険って本当に必要なの?
A 生命保険を考えるときに「必要保障額」という言葉があります。その人にとって病気や死亡、就労不能、老後、多額な出費を伴うイベントなどといった「万一」の場合の生活を維持するために必要な額です。生命保険は人によって「万一」の場合のニーズや必要保障額が違います。例えば既婚者と独身者ではニーズと必要保障額は違います。男性と女性でも違います。
しかし、「万一」は誰にでも起こり得ます。そのときの「必要保障額」を何で賄うかを考えたときに、公的保障や企業保障、個人資産で賄いきれないならば、生命保険を検討してみるのもよいでしょう。
Q2 生命保険ってどんな効果があるの?
A Q1のような家庭経済に損失を与える「万一」の事態から家族や自身を守ります。老齢年金、遺族年金、健康保険、介護保険等の公的保障や企業保障で賄いきれない分を補います。■公的保障制度と生命保険の保障例
○老後生活費の備え・・・公的老齢年金+個人年金保険や積立型終身保険○遺族の生活保障・・・公的遺族年金+死亡保険金
○疾病の備え・・・公的健康保険+医療保険やガン保険
○介護の備え・・・公的介護保険+民間介護保険
Q3 生命保険っていくら入ればいいの?
A 「いくら」という部分は一人ひとり違います。「万一」の状況や必要保障額、生命保険以外の手段は人によって異なるからです。ここでは計算の考え方をいくつか紹介しましょう。■必要保障額の計算例
- ○家族への保障
(毎月の生活費−遺族年金月額)×保障が必要な期間 - ○老後生活の備え
(毎年の生活費−老齢年金などの年金月額)×平均余命 - ○医療保障
治療費×自己負担割合−高額療養制度の還付分
Q4 生命保険の見直しについて気軽に相談できる機関はないの?
A 最近、街頭やショッピングモールなどで、いくつもの生命保険会社の名前を店頭に掲示した「来店型保険ショップ」と呼ばれる生命保険の総合代理店をよく見かけます。これは複数の生命保険会社と代理店契約を結び、生命保険の専門家が相談から契約まで対応してくれるところです。予約なしでも気軽に立ち寄って無料で相談にのってもらうことができます。すでに契約している生命保険の見直しだけでなく、これから契約をしたい人がどの生命保険会社のどの生命保険を選択すればよいか、比較検討したいときにも便利です。
思い立った時にすぐに相談に応じてほしいという人や、特定の生命保険会社に相談に行くのは気が進まないという人、どこに相談に行ったらよいのか分からないなどといった人は、利用してみてもよいでしょう。
Q5 生命保険の請求手続きは誰にどうやって頼めばいいの?
A 契約している生命保険会社のコールセンターを利用しましょう。代理店や保険会社の営業担当者、プランナーが手続きを取り次いでくれる場合もありますが、生命保険会社には「お客様サービスセンター」や「ダイレクトコールセンター」などと呼ばれるコールセンターがあります。またホームページ上で対応している会社もあります。「万一」はいつやってくるかわからないので予め確認しておきましょう。
手続きの際は「契約者」が保険証書(証券)を用意して「保険証書(証券)番号」をすぐに伝えられる状態で連絡すると早い対応が受けられます。
Q6 生命保険の契約にクーリング・オフってあるの?
A 特別な場合を除いて、クーリング・オフ(契約の解除)できます。一般的には、クーリング・オフに関する書面を受け取った日または申込日のいずれか遅い日から、その日を含めて8日以内※であれば、契約をクーリング・オフすることができます。第1回保険料が支払われていた場合は全額返金されます。
※生命保険会社によっては、規定により9日以上の場合もあります。
■クーリング・オフができない場合
○契約にあたって、医師による診査を受けた場合○保険期間が1年以内の契約の場合
○法人契約の場合
Q7 生命保険は疾病を持っていると契約できないの?
A 保障の対象となる被保険者の現在の健康状態や過去の病歴などによっては、契約できない場合があります。そこで契約する際には、契約者は被保険者の現在の健康状態、過去の病歴を告知しなければなりません(告知義務)。この告知をもとに、生命保険会社は契約するかどうかを判断します。ただし、疾病や病歴を持っていても、特定の条件のもとに契約できることもありますので、確認してみましょう。
■現在疾病をもっていたり過去に病歴があっても契約できる商品例
○病気が完治して一定年数が経過した場合に契約できる商品○保険料を割増しすれば契約できる商品
○保険金を通常よりも減らして契約できる商品 など
Q8 生命保険は解約するともう元には戻せないの?
A 生命保険の契約はいったん解約すれば、もとに戻すこともできません。また、以後の保障も一切なくなります。再契約しようとしたときには、年齢が上がり保険料が以前より高くなったり、健康状態によっては保険料の割増になったり契約できなかったりする場合もあります。ですから、生命保険を解約する際にはよく検討することが必要です。解約のときには必ず書類の提出が必要です。保険料の支払いを中止したり電話で連絡しただけでは、解約の手続きとみなされません。
なお、解約する時点で解約返戻金があれば受け取れますが、通常は払い込んだ保険料総額より少なくなります(解約返戻金が出ないこともあります)。
Q9 保険料っていつまで払えばいいの?
A 生命保険商品には支払い方法についていくつかのパターンがあります。 生命保険は支払い期間が長い商品なので、いくつかのパターンを検討して最適な払い込み方法を選択しましょう。支払い方 | メリット | |
一時払い | 一括で全期分の支払いを終了させる(一時払いが可能な商品と可能でない商品がある)。 | ・毎月や毎年の支払いが無くなりランニングコストが下がる。 ・貯蓄性の商品の場合、一定期間後の解約返戻率が高くなる傾向がある。 |
前納払い | 納期前に支払いを終了させる。全期前納と一部前納がある。 | 前納は保障の目的が明確な場合や数年間のランニングコストを抑えたい場合に有効。 |
短期払い | 例えば「終身保険の60歳払込み終了」といった短期払いの場合、保障は終身で支払いは60歳で終了する。 | 収入が減ってしまう退職予定年齢までを目処に支払いを終えることができれば、退職後の家計への負担を軽減できる。 |
終身払い | 保険料が比較的安い医療保険やガン保険などに対して、亡くなるまで保障を必要とする場合、生涯保険料を支払い続ける。 | 短期払いよりもランニングコストが低いので後で特約追加する場合に有効。 |
■払込み方法は保険料総額で比較すると・・
一時払い<全期前納<年払い<半年払い<月払いQ10 経済的な理由で保険料の支払いが困難になったときにはどうすればいいの?
A
生命保険はいったん解約してしまうと、契約は白紙になってしまいますから、できれば解約せずに解決したいものです。
保険料を滞納し払込猶予期間が経過すると、生命保険会社が利息付で立替える場合もありますが、そうでなければ契約が効力を失います。
※生命保険会社が立替えた分を未納のままにして満期(または被保険者が死亡)になれば、保険金額より未納分が差し引かれます。
そこで、次のような解決法で検討してみましょう。
解決法① 保険金額を減額する
保険金額を減額して、その分、保険料を下げます。解決法② 特約を解約する
付加している特約だけ解約して、その分保険料を下げます。解決法③ 保険期間の短い保険に変更する
保険料の支払いをいったん中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間の短い定期保険(死亡・高度障害保障のみ)に変更します。解決法④ 保険金額の少ない保険に変更する
保険料の支払いをいったん中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保障額の少ない保険(同じ種類の保険または養老保険)に変更します。Q11 煙草を吸っていない人は保険料が安くなる生命保険があるって本当なの?
A 直近の1年間(生命保険会社によっては2年間)煙草を吸っていない人には、通常より安い保険料率が適用される定期保険商品などがありますので生命保険会社に確認してみましょう。そのほか、身長・体重・血圧・尿検査等について一定の基準を満たしている場合、「健康体」とみなして保険料が安くなるものもあります。
Q12 保険金が受け取れないのはどんなとき?
A 保険金が受け取れないのは次のようなときです。○約款にある「支払事由」に該当しないとき
○約款にある「免責事由」に該当したとき
○現在の健康状態や過去の病歴について告知を求められているにもかかわらず行わなかったとき
○詐欺行為や不法行為によって保険金を騙し取ろうとしたとき
Q13 「指定代理請求制度」ってなに?
A 指定代理請求制度は、被保険者に下記のような特別な事情があるときに限り、契約者があらかじめ指定した代理人が被保険者に代わって、保険金を請求できるシステムです。代理人の指定に関しては、契約者は被保険者の同意を得る必要があります。■指定代理請求制度に係る「特別な事情」の例
○疾病等により、保険金等を請求する意思表示ができないとき(1)○治療上の都合により、被保険者が自分の傷病名や余命の告知を受けていないとき(2)
○その他(1)または(2)に準じた状態であるとき
Q14 遺産の相続を放棄すると死亡保険金は受け取れなくなるの?
A 死亡保険金は契約者(被保険者)の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。ですから、相続を放棄しても死亡保険金は受け取れます。ただし、契約者と被保険者が同一人の場合、死亡保険金は、税制上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。
■生命保険の契約例と相続税
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金 |
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |