前回は生命保険を考える前に是非知っておきたい「公的保障」についてお伝えしましたが、今回は民間商品の生命保険の種類をみてみましょう。
(社)生命保険協会に登録されている生命保険会社は43社(平成24年6月1日現在)もあり、生命保険商品は数えきれません。
生命保険商品を一つひとつ理解することは不可能ですので、ここでは「主契約別」という分け方を中心に代表的なポイントで解説します。
ファイナンシャルプランナー 星野 諒
生命保険は、まず、「何に対して備えたいか」、その目的によって大きく分かれます。
死亡したときのための備えに対しては死亡保障の生命保険、入院費などの備えに対しては医療保障の生命保険、介護費用の備えに対しては介護保障の生命保険、などとなっています。
生命保険に加入している方は、「生命保険証券」をご覧になってみてください。生命保険には、必ず「主契約」・「特約」・「特則」という契約上の分類があります。
主契約(=生命保険の商品)は単独で契約することができますが、特約と特則は単独では契約できません。
この分類は、商品のパンフレットを見る際やプランの提示を受けたときに必要な知識です。
■主契約・特約・特則
契 約 | 内 容 | 例 |
主契約 | その生命保険の保障内容の主軸となるものです。 | 定期保険、養老保険、終身保険、個人年金保険、医療保険・・・など |
特 約 | 主契約に対して、保障内容を充実させるために付加する独自の契約です。 | 定期保険特約*1、災害特約*2、リビングニーズ特約*3、代理請求人特約*4・・・など |
特 則 | 主契約に付加して、特定の場合だけに保障する特別な措置です。 | 配偶者特則、こども特則・・・など |
※主契約は、いろいろな機能が組み合わされて表記が変わる場合がありますが、基本的には「○○終身保険」や「△△定期保険」とか「□□保険特約付終身保険」というように主契約たる文字は変わりません。
*1 定期保険特約:終身保険に対して、一生涯の保障とは別に、ある条件のもと一定期間・一定の保障額の特約を組み合わせます(例:末子が高校卒業の年齢までに被保険者が死亡した場合は○○万円)。
*2 災害特約:災害で死亡または所定の高度障害状態になった場合に、主契約の死亡保険金に加えて割増保険金が支払われます。
*3 リビングニーズ特約:余命6か月以内と判断されたとき、死亡保険金の全部または一部が生前に支払われます。
*4 代理請求人特約:被保険者が保険金を請求できない特別な事情があるときは、予め指定した代理人(家族など)が本人に代わって請求できます。
全ての生命保険は次の3種類の基本型タイプに属しています。
基本型① 定期保険
保険期間は一定期間。一定期間に死亡した場合は死亡保険金を受け取れますが、満期金はありません。保険期間を過ぎて死亡した場合は、死亡保険金は出ません。【例】
定期保険(更新型) | 10年・15年といった短期間で契約が自動更新されます。保険料は変更(値上がり)します。 |
定期保険(全期型) | 30年、40年と更新なく一定の長期間、保障します。保険料は一般的に更新型より高くなっています。 |
逓減定期保険 | 必要保障額の減少を見越して保障額が減るタイプ。経過年数に応じて保険金額が減っていきます。 参考 企業経営者向けには、必要保障額の増加を見越して保障額が増える「逓増定期保険」があります。 |
三大疾病定期保険 | 一定期間に三大疾病で死亡した場合に死亡保険金を受け取ることができます。 |
収入保障定期保険 | 一定期間に死亡した場合、死亡保険金を年金形式で受取ることができます。 |
基本型② 養老保険
保険期間は一定期間。一定期間に死亡した場合は死亡保険金を受け取れます。さらに、定期保険と異なり、保険期間が終了したときに満期金が出ます。基本型③ 終身保険
保険期間は一生涯。どの時点で死亡しても死亡保険金を受け取れます。解約返戻金が増えていくので貯蓄機能もあり、資金活用が可能です。借入れや特約で年金移行できるものもあります。【例】
積立利率変動型終身保険 (アカウント型保険) |
保険料を積立金とみなし、利率(金利)によって受け取れる死亡保険金が変わってきます。 |
一時払い終身保険 | 保険料は1回で払い込み、その額に応じて死亡保険金を受け取れます。資産運用としても活用されることがあります。 |
特定疾病終身保険 | 三大疾病で死亡した場合に死亡保険金を受け取ることができます。 |
変額保険(終身型) | 一生涯、死亡保障しますが、保険会社が払い込まれた保険料を株式や債権を中心に運用し、その運用実績に応じて死亡保険金および解約返戻金などの額が変動します。 |
■基本形のそれぞれの特徴
定期保険 | 養老保険 | 終身保険 | |
保険期間*1の長さ | 一定期間 | 一定期間 | 一生涯 |
保険料払込期間の長さ | 一定期間*2 | 一定期間 | 一定期間 |
死亡保険金の有無 | 有り*3 | 有り | 有り |
満期保険金の有無 | 無し | 有り | 無し |
*1 保険期間とは、生命保険によって保障される期間のことを言います。
*2 被保険者の選択により、保険料払込期間より保険期間を長くする(例:保険料払込期間10年、保険期間30年)こともできる場合がありますが、解約返戻金を目的とした被保険者が多いことから、生命保険会社全体で見直す傾向にあります。
*3 一定の保険期間を過ぎて死亡した場合は、死亡保険金が出ません。
医療保険は、一定期間に傷病により入院した場合に、保険金を受け取ることができる保険です。ガンや三大疾病に特定しているものもあります。
近年では、持病がある人向けに「引受条件緩和型医療保険」なども取り扱われています。
保険期間
定期(更新型)タイプと終身があります。主契約の特徴
主契約は「入院給付金」が中心で、「入院日額○○○○円」という考え方で設計されます。■プランの例
例①:医療保険 | 例②:ガン保険 |
主契約の内容(定期/終身) ○入院給付金 (傷病により入院した場合、給付金を受け取れる) |
主契約の内容(定期/終身) ○ガン診断給付金 (ガンと診断された場合に給付金を受け取れる) ○ガン入院給付金 (ガンによる入院の場合、給付金を受け取れる) |
給付金額の例
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給付金額の例 主契約:ガン診断給付金:100万円 入院日額 10,000円 通院特約:日額3,000円 配偶者特則付(配偶子がガンにかかった場合、給付金を受け取れる |
社会保障制度上の公的介護保険とは異なり、民間の介護保険には独自の取扱いがあります。ただし、介護保険金の受け取りの条件となる「要介護」は、公的介護保険の要介護度と連動していることが多いようです。契約は、「介護」を主契約とするタイプと、死亡保障などに対して特約とするタイプに分かれています。
また、商品によって保険金の支払が、公的介護保険制度に連動するタイプと連動しないタイプがありますので利用の際はよく確認して下さい。